被害届と告訴の違い
1 被害届とは何か
被害届とは、犯罪に遭った事実を捜査機関に申告するための書類のことをいいます。
あくまで、犯罪に遭ったという事実を捜査機関に伝えるための書類であって、犯人の処罰を求める意思を捜査機関に伝えるための書類ではありません。
2 告訴とは何か
告訴とは、被害者等が捜査機関に対して、犯罪に遭った事実を申告して犯罪者の処罰を求めるための手続きをいいます。
告訴は、犯罪に遭ったという事実を捜査機関に伝えるだけでなく、犯人の処罰を求める意思も捜査機関に伝えるための手続きとなります。
3 被害届と告訴の法律上の違い
被害届と告訴の違いの一つ目は、捜査機関に捜査をする義務が発生するかどうかという点です。
被害届を捜査機関に提出したとしても、捜査機関は捜査する義務を負いません。
一方で、捜査機関が告訴を受理した場合、捜査機関は捜査する義務を負うこととなります。
その点で、告訴の方が被害届よりも被害者にとって有利となります。
もっとも、告訴を受理することは捜査機関にとって負担が大きいため、告訴は簡単には受理されにくいというのが現状です。
そのため、弁護士が被害者を代理して告訴の手続きをするということも多いです。
被害届と告訴の違いの二つ目は、被害者からの告訴がないと起訴することができない親告罪という犯罪があるという点です。
例えば、強制わいせつ罪等といった親告罪については、捜査機関に被害届が提出されていたとしても、被害者からの告訴がなければ起訴することができません。
被害届と告訴の違いの三つ目は、手続きをすることができる者に違いがあるという点です。
被害届については、誰でも行うことができます。
犯罪の目撃者といった被害者以外の者でも被害届を提出することが可能です。
告訴については、被害者やその法定代理人等、告訴することができる者が法律によって定められています(刑事訴訟法230条~234条)。
そのため、法律によって定められた者以外は告訴をすることができません。