労災保険で障害認定されましたが、自賠責保険の後遺障害も同じように認定されますか?
1 前提となるシチュエーション
通勤中や業務中に交通事故に遭って負傷した場合は、労働者災害補償保険、すなわち労災を使用することができます。
同時に、加害車両に付保されていた自賠責保険(共済含む、以下同じ)を使用することもできます。
労災と自賠責保険のいずれも使える場合、労災を先行させることも、自賠責を先行させることも可能です。
症状固定時に残存症状が残った場合、労災においては障害(補償)給付が、自賠責においては後遺障害保険金が用意されています。
この場合、先行した労災又は自賠責において●等級が認定された場合、後行する自賠責又は労災でも同じ●等級が認定されるのかというのが、ここでの問題です。
2 障害・後遺障害の定義と審査基準
労災では補償の対象となる障害について、①傷病が治ったときに残存するもので当該傷病と相当因果関係があること、②将来において回復が困難と見込まれる精神的又は身体的な毀損状態であること、③その存在が医学的に認められること、④労働能力の喪失を伴うものであることを要件としています。
自動車損害賠償保障法16条3では、自賠責保険金は「支払基準」に従って支払うべきと規定されています。
そして、金融庁・国道交通省から出された「支払基準」では、後遺障害による損害は、原則として労災の障害等級認定基準に準じて行うとされています。
以上のことからすると、労災の障害と自賠責の後遺障害は、定義も審査基準も同じであると解されます。
3 障害(労災)と後遺障害(自賠責)の相違が生じる場面
労災は、基本的に労働に従事する成人について、就労の場面での影響を中心に考えています。
他方、自賠責は、通常は労働に従事しない高齢者・年少者や現金収入のない家事従事者も対象に含み、労働だけでなく社会生活全般における不利益も評価することが求められています。
このような目的の違いによって、認定内容に少なからぬ違いが生じることが予想されます。
また、労災の審査機関は労働基準監督署であるのに対し、自賠責保険の審査機関は損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)です。
審査に当たって、医師や本人・親族から取り付ける書類の書式は、同じではなりません。
面談調査についても、自賠責は外貌醜状しか原則行っていないのに対して、労災では基本的に全件実施されます。
このようなことから、労災と自賠責の認定内容が異なる場面がしばしば見受けられます。
例としては、局部の神経症状について、労災が12級の12と認定したものを自賠責では14級9号としか認定しなかったり、自賠責が後遺障害認定したのに対して労災では認定しなかったりすることがあげられます。
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