相続時精算課税制度の改正ルールは、いわゆる生前の相続税対策の場面で利用を検討することが多いと思います。
他方で、今回、法改正がなされ、年110万円が課税対象から外されることになったことに伴い、相続税申告の場面でも、この制度を活用すべきかどうか、検討すべき場面が出てきたように思います。
相続時精算課税を利用していなかった方が亡くなられた場合、相続財産やみなし相続財産(死亡保険金、死亡退職金等)だけでなく、過去7年間に相続人等に対して贈与された財産も、相続税の課税対象になります。
※ ただし、令和5年12月31日以前になされた贈与については、過去3年間に贈与されて財産が課税対象になります。過去7年間に相続人に対して贈与されて財産については、(早い段階でなされた贈与については特別控除を適用することができるものの、)相続税の課税対象になってしまうということについては、注意する必要があります。
それでは、相続時精算課税選択を利用していない状況下で、ある人が贈与を行ったものの、その年に亡くなられた場合を考えたいと思います。
この場合、相続時精算課税制度を利用しないまま、相続税の申告を行うと、亡くなった年に贈与された財産についても、相続税が課税されることとなってしまいます。
ところで、前回まとめたとおり、相続時精算課税選択届は、被相続人が亡くなったあとでも提出することができます。
被相続人が亡くなったあとでも選択届を提出すれば、その年の贈与については、1人当たり110万円までは相続税が課税されないこととなります。
このため、被相続人が亡くなったあとでも選択届を提出すれば、相続税を軽減することができることとなるのです。
このように、相続税申告の段階でも、相続時精算課税を利用していない場合は、今からでも相続時精算課税選択届を提出すれば、110万円については相続税の課税対象から外すことができるのではないかということを検討するのが合理的であると言うことができます。
三重県でも、このような理由から、相続税申告書とともに相続時精算課税選択届を提出した案件が何件かあります。
ただ、前回まとめたとおり、この場合は、相続時精算課税選択届の提出先、提出時期、提出方法に気をつける必要があります。
間違った仕方で相続時精算課税選択届を提出してしまうと、最悪の場合、相続時精算課税制度を利用していないものと扱われ、追加で相続税を納付しなければならなくなる可能性もありますので、注意が必要です。