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消滅時効についての法改正2

2020年4月施行の改正民法により、消滅時効の期間が10年から5年に短縮されることによって発生する「2025年4月問題」については、少し奇妙な現象が発生します。

たとえば、貸主が借主に対し、期限の定めなく、次のとおり金銭を貸し渡した場合を考えたいと思います。

➀ 2018年5月 100万円を貸付

② 2019年5月 100万円を貸付

③ 2020年5月 100万円を貸付

④ 2021年5月 100万円を貸付

⑤ 2022年5月 100万円を貸付

この貸付は、個人間の独立した貸付(一連性がない貸付)であり、1個1個の貸付について、消滅時効が完成するとします。

➀、②の貸付については、2020年4月よりも前の貸付であり、改正前の民法が適用されます。

このため、貸付を行った日から10年が経過すると、消滅時効が完成することとなります。

③、④、⑤の貸付については、2020年4月以降の貸付であり、改正後の民法が適用されます。

規定上は、権利を行使できることを知った時から5年または権利を行使できる時から10年で消滅時効が完成することとなりますが、通常は貸付を行った時点で権利を行使できることを知っていたと考えられますので、貸付を行った日から5年が経過すると、消滅時効が完成することとなります。

これを踏まえて、それぞれの貸付の消滅時効の完成日を書き加えると、以下のとおりになります。

➀ 2018年5月 100万円を貸付 → 2028年5月に消滅時効が完成

② 2019年5月 100万円を貸付 → 2029年5月に消滅時効が完成

③ 2020年5月 100万円を貸付 → 2025年5月に消滅時効が完成

④ 2021年5月 100万円を貸付 → 2026年5月に消滅時効が完成

⑤ 2022年5月 100万円を貸付 → 2027年5月に消滅時効が完成

今が2025年3月でしたら、➀から⑤は、いずれも消滅時効が完成していないこととなります。

それでは、今が2025年6月でしたら、どうでしょうか?

➀、②については、消滅時効が完成していないこととなります。

③については、消滅時効が完成していることとなります。

④、⑤については、消滅時効が完成していないこととなります。

このように、真ん中の時期になされた貸付だけが消滅時効が完成し、返済しなくても良いこととなり、他の貸付については消滅時効が完成しないため、返済しなければならないという現象が発生することとなりそうです。

さらに時間が経過し、2027年6月になったら、どうでしょうか?

①、②については、消滅時効が完成していないこととなります。

③、④、⑤については、消滅時効が完成していることとなります。

このように、古い時期になされた貸付については消滅時効が完成せず、返済しなければならないこととなり、新しい時期になされた貸付については消滅時効が完成し、返済しなくても良いこととなるという、逆転現象が発生することとなりそうです。

このように、2025年4月からしばらくの間(5年間)は、必ずしも古い権利から順に消滅時効が完成するとは限らないこととなるため、時効が成立しているかどうかの判断を慎重に行う必要がありそうです。

時効の問題は、判断を誤ると、弁護士として死活問題になりかねませんので、2025年4月以降は、より一層の注意を払いたいと思います。