1 遺言の種類
遺言の文例を確認すると、「●●に相続させる」と記載しているものと、「●●に遺贈する」と記載しているものがあります。
こうしたわずかな書き方の違いがあるだけで、まったく異なる種類の遺言が作成されたと扱われることとなります。
このため、書き方が違うだけで、遺言による手続の進め方や、課税される税金も違ってくることがあります。
ここでは、遺言の種類について、概略を説明したいと思います。
2 相続させる遺言
相続させる遺言は、相続人が遺産分割する方法を指定するものです。
このため、相続人に対してのみ、相続させる遺言を残すことができます。
仮に、相続人以外の人に対して、形上、「●●に相続させる」との文言の遺言を作成したとしても、その遺言は後述の遺贈する遺言に読み替えられることとなります。
3 遺贈する遺言
遺贈する遺言は、特定の人に遺産を引き継ぐものとすることを記載したものとなります。
遺贈する遺言は、相続人に対しても、相続人以外の人に対しても、残すことができます。
4 包括遺贈と特定遺贈
遺贈する遺言には、包括遺贈と特定遺贈があります。
包括遺贈と特定遺贈のどちらかであるかによっても、異なる手続により名義変更がなされ、異なる税金が課税される可能性がありますので、ここで違いを説明しておきたいと思います。
包括遺贈は、「すべての財産を遺贈する」、「財産の2分の1を遺贈する」というように、個々の財産を特定せず、遺産全体をまとめて遺贈することを言います。
特定遺贈は、「●●市●●町●●番地の土地、建物を遺贈する」というように、個々の財産を特定して遺贈することを言います。
中には、包括遺贈か特定遺贈か、判断に迷うことがあります。
たとえば、「預貯金のすべてを遺贈する」、「預貯金の全額の2分の1を遺贈する」の場合はどうでしょうか?
この場合は、預貯金全体をまとめて遺贈していますが、遺産全体をまとめて遺贈しているわけではありません。
このため、特定遺贈に該当すると解釈されます。
「●●市●●町●●番地の土地、建物以外の財産を遺贈する」の場合はどうでしょうか?
この場合は、特定の不動産以外については、遺産全体をまとめて遺贈することとなりますので、包括遺贈に該当すると解釈されます。
こうした遺言の解釈は、専門家でも迷うところですので、相続に詳しい弁護士にご相談いただいた方が良いと思います。