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遺留分の計算方法

遺留分については,相続分に2分の1を掛け算することにより,簡単に計算ができるとの説明がなされることがあります。
確かに,多くの事例では,相続分に2分の1を掛け算することにより,遺留分を算定することができます。
ところが,実際には,イレギュラーな事情があると,相続分に2分の1を掛け算する計算方法だと,誤った計算になり,遺留分額が大きく異なってくることがあります。

遺産総額次第では,わずかな分数の違いにより,算定される遺留分額も大きく異なってきます。
弁護士として遺留分についての相談をお受けする場合には,イレギュラーな事情を見逃すことのないよう,細心の注意を払わなければならないところです。
そのためには,遺留分の算定方法について,正確な理解をしておく必要もあります。

第一に,弁護士等の法律家がすぐに思いつくのが,亡くなった方に子がいない等の理由により,父母のみが相続人となる場合です。
たとえば,父母のみが相続人である場合で,相続人ではない第三者に対し,遺産のすべてを遺贈するという遺言が残されていた場合です。
この場合に,父母が第三者に対して遺留分侵害額請求を行うと,総体的遺留分は,2分の1ではなく,3分の1となります。
このため,父母のみが相続人の場合は,算定される遺留分額は,子や配偶者が相続人である場合と比べて,小さくなることとなります。

第二に,配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合です。
たとえば,相続人ではない第三者に対し,遺産のすべてを遺贈するという遺言が残されていた場合を考えたいと思います。
この場合,相続分は,配偶者が4分の3,兄弟姉妹が4分の1です。
このため,相続分に2分の1を掛け算する考え方だと,配偶者の遺留分は8分の3であると言いたくなってしまうところですが,これは誤りです。

遺留分については,正確には,①まず総体的遺留分を計算し,②総体的遺留分を個々の遺留分権利者で分け合うという計算方法を用います。
今回の総体的遺留分は,父母のみが相続人の場合(第一の場合)ではないですので,2分の1となります。
次に,個々の遺留分権利者で分け合う計算になりますが,兄弟姉妹は,法律で遺留分権利者ではないこととされていますので,遺留分を分け合う立場にはないこととなります。
この結果,配偶者のみが遺留分権利者となりますので,配偶者が2分の1の遺留分をすべて主張することができることとなります。

最近,世間の注目を集めた,全財産を地方公共団体に遺贈するとの遺言が残されていた件が,まさしく第二と同じような状況になっていましたので,遺留分の計算方法についての話をまとめてみました。