月別アーカイブ: 2017年 8月

遺言書の開封・検認

遺言書が封筒などに封印されているときは,家庭裁判所で開封しなければなりません。
また,遺言書(公正証書遺言は除きます)は,家庭裁判所で検認しなければなりません。

開封・検認の手続は,同じ期日に行われます。
開封・検認の手続を行うに先立って,相続人全員に対して通知が行われ,手続きに立ち会う機会が与えられます。

家庭裁判所以外で開封したり,検認の手続きを行わなかったりした場合には,5万円以下の過料の制裁が科せられます。
また,検認を経なければ,一定の場合には,不動産登記の名義を変更することができません。
もっとも,これらの手続きを怠ったからといって,遺言自体が無効になるわけではありません。

開封・検認については,弁護士を代理人として,手続を進めることもできます。
この場合には,開封・検認の期日には,弁護士のみが出頭し,相続人本人については出頭しないこととすることもできます(ただし,相続人本人が検認期日に出頭し,遺言書の保管方法等について陳述することを求める裁判所もあります)。

特別受益の持戻し免除

民法は,被相続人が,相続開始時までに,遺産分割に際して特別受益を持ち戻す必要がないとの意思表示を行った場合は,持戻し計算をしないものとしています。
この場合は,特別受益を考慮することなく,相続分を基準として,遺産分割が行われることになります。

たとえば,事業承継のために,後継者に対して,自社株の生前贈与が行われた場合に,生前贈与された自社株が特別受益と扱われると,その分,相続の際の後継者の取り分が少なくなってしまいます。
そうなると,残りの自社株や事業用資産を後継者に集中的に承継させることができなくなってしまうおそれがあります。
このような場合には,持戻し免除の意思表示をすることにより,生前贈与された自社株が特別受益と扱われないようにすることができます。

生前贈与の持戻し免除については,方式について法律の特別の定めはありません。
実際には,持戻し免除の制度自体が広く知られていないためか,明示的に,持戻し免除の意思表示が行われることは,それ程多くありません。
実務上は,生前贈与を受けた相続人から依頼を受けた弁護士が,黙示の持戻し免除の意思表示が存在するとの主張を行うことが多いです。