次のような所有不動産があったとします。
1 土地の評価額が2500万円
2 土地の上に,自宅の建物と,アパートが存在(広さは同程度とする)
3 自宅の建物の評価額が500万円
このような場合に,土地+自宅建物の評価額は,3000万円です。
それでは,土地の共有持分3分の2と,自宅の建物の共有持分の3分の2を贈与することとした場合,(2500万円+500万円)×3分の2=2000万円として,配偶者控除の枠内と扱ってもらうことができるのでしょうか。
上記と似た事例で,裁判所は,土地のうち,半分は自宅の建物の土地として,半分はアパートの土地として利用されているため,(夫婦の)居住用不動産と評価することができるのは,半分だけでああるとしました。
つまり,評価額2500万円の土地のうち,自宅の建物分の1250万円については(夫婦の)居住用不動産になりますので,共有持分3分の2の贈与は配偶者控除の対象になります(贈与税は課税されない)が,アパート分の1250万円については(夫婦の)居住用不動産にならないため,共有持分3分の2の贈与は配偶者控除の対象にならないこととなるのです。
この場合,単純計算でも,約164万円の贈与税が課税されることとなるのです。
このように,自宅の土地上に自宅の建物以外の建物が乗っかっている場合,共有持分の贈与では,想定通りに配偶者控除を使えないことがあるのです(他にも,子ども世代の建物が乗っかっている場合も,注意が必要だと思います)。
ですから,このような場合は,いくらかの手間と費用がかかるとしても,土地を分筆した上で贈与することをメインで考えたりします。
贈与税は,一度課税されてしまうと,税額が多額になりますので,実際に財産を動かすに際しては,注意が必要です。
弁護士として活動する場合であっても,事案に関係する税金については,代表的な裁判例を把握しておきたいものです。