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贈与税の配偶者控除2

贈与税の配偶者控除により,2110万円以下(暦年課税の場合)の贈与であれば,贈与税の課税が避けられることとなる反面,不動産の評価額が2110万円を超える場合は,超える部分につき,贈与税が課税されることとなります。
三重県でも,幹線道路の近くや駅の近く等だと,自宅不動産の評価額が2110万円を超えることがしばしばあります。

このような場合,割り切って,超える部分の贈与税を納付してしまうのも1つの考え方です。
それでは,自宅不動産が2110万円を超える場合であっても,贈与税が課税されるのを避けたい場合は,どのようにすれば良いのでしょうか。
解決策としては,自宅不動産をすべて贈与してしまうのではなく,自宅不動産の一部を贈与してしまうというものがあります。

最も手がかからないのは,自宅不動産の共有持分を贈与してしまうという方法です。
たとえば,自宅の土地の評価額が2500万円,自宅の建物の評価額が500万円の場合,自宅の土地の共有持分3分の2と自宅の建物の共有持分3分の2を贈与するという方法をとれば,贈与対象財産を,(2500万円+500万円)×3分の2=2000万円に抑えることができ,配偶者控除の範囲内で贈与することができるのです。

もう1つ,自宅不動産を実際に分割してしまうという方法もあります。
たとえば,自宅の土地がある程度広く,自宅の建物が土地の一部を占めているにすぎない場合,自宅の建物が乗っかっていない部分を分筆してしまい,分筆して狭くなった土地を贈与することが考えられます。

一般に,土地を分筆する際には,土地家屋調査士に依頼することとなります。
分筆の費用は,土地の広さによりますが,おおむね数十万円位達します。
色々と手間もかかりますので,支障がなければ,共有持分を贈与する方が,手間がかからないように思います。

ただ,土地の利用状況によっては,共有持分の贈与という手がうまくいかない場合があります。
最近,裁判例も出ているようですので,改めて紹介したいと思います。

贈与税の配偶者控除1

不動産等の財産を贈与した場合,多額の贈与税が課税されることは,広く知られていると思います。
たとえば,2000万円の不動産を贈与した場合,単純計算で,720万円もの贈与税が課税されてしまいます。

相続税対策のため,自分が所有している財産を減らしたい,そのために,自宅不動産を親族に贈与したいという相談は,弁護士会の相談等でも受けたことがあります。
私が相談をお受けする中でも,相続税の増税の影響から,相続税対策への関心が高まっていると感じる場面です。

とはいえ,親族が受け取る場合であっても,贈与である以上,多額の贈与税が課税されることとなります。
相続税対策のため,多額の贈与税が課税されることとなっては,元も子もありません。
そこで,贈与税の課税を避けつつ,財産を親族に移転する方法がないかという話になるのです。

贈与税を軽減する規定で,金額的に大きいものに,配偶者控除があります。
これは,婚姻期間が20年以上に達した夫婦の間で,(夫婦の)居住用不動産を贈与する場合に,2000万の非課税枠が設けられるというものです。
暦年課税の場合,毎年の110万円の基礎控除と合わせると,(夫婦の)居住用不動産が2110万円以下であれば,贈与税が課税されないこととなるのです(居住用不動産以外に贈与が行われていないことが前提です)。
配偶者控除は一生に1回しか使えませんが,金額が大きいため,非常に強力な手段になるのです。

この特例を使う場合は,贈与税の申告期限(3月15日)までに申告を行う必要がありますので,注意が必要です。

また,贈与税以外の税金(登録免許税,不動産取得税)が課税される点も,注意が必要です。