葬儀費用は相続人が分担すべきであるという見解に立つ場合であっても,何点か留意すべき点があります。
第一に,葬儀費用とは,どの範囲までを言うのかという問題です。
いわゆる,通夜・告別式につきましては,葬儀費用であることが争われ難いと思います。
他方,初七日法要,四十九日法要等については,果たして遺産から差し引くべきかどうかが議論になることがあります。
初盆・三回忌にまで至ると,遺産から差し引くべきであるという主張を維持することは,かなり難しいように思われます。
第二に,分担されるべき葬儀費用は,香典の額を差し引いた残額であるという点です。
過去の裁判例にも,葬儀費用は香典の額とつりあう額になることが多いため,香典の額を超えて葬儀費用を負担したとの証明がなされなければ,葬儀費用を差し引くべきではないとの結論を述べたものがあります(弁護士になってから,何回この裁判例を引用したか分からなくなるくらい,引用しているような気がします)。
このように,葬儀費用の分担を主張する場合には,どの範囲までを主張することができるのか,香典の額との大小がどうなっているのかを検討する必要があるように思います。
しかしながら,現実には,この点についての検討を行うことなく葬儀費用の分担の主張がなされることも多く,手続の遅延を招いてることもあるように思います。
こうした問題については,事前に説明を行い,当事者の理解を得ておく必要があるように思います。