日別アーカイブ: 2015年9月16日

お墓の「相続」

お墓が遺産になるかどうかという話が出ることがあります。
このような場合,法的には,原則として,お墓は相続の対象にはならないという話をすることになります。

お墓というと,まず,墓石を思い浮かべることが多いと思います。
墓石は,法律上,祭祀財産とされています。
祭祀財産は,祭祀主宰者に引き継がれることとなっています。
このため,墓石は,遺産とは別の理屈で引き継がれることとなります。

祭祀主宰者は,第一に,被相続人の意思,第二に,被相続人の意思が明らかではない場合は,慣習,第三に,慣習が明らかではない場合は,家庭裁判所の審判により決まることとなっています。
遺産のように,遺言がない場合は,相続人間の協議等で決めるわけではないのです。
このことは,私法上の大原則を定めた民法において,明確に規定されています。

以上のような規定になっていますので,祭祀財産の引継ぎは,通常の遺産分割とは異なる部分が色々とあります。
たとえば,被相続人の意思については,遺言のように書面で残っている必要はなく,口頭で示しても構わないという違いがあります。
他にも,慣習や審判により,相続人ではない人(内縁の配偶者等)が祭祀主宰者になる場合もあり得ます。

墓石以外にも,墓地利用権についても,祭祀主宰者に引き継がれることとなります。
お墓を設ける際,お寺や公設墓地との間で,墓地利用権が設定されます。
このような権利についても,祭祀財産として,祭祀主宰者に引き継がれることとなるのです。

このようなお墓の引継ぎの問題は,弁護士であっても,正面から事件として担当することはほとんどありません(相談を受けることは,時たまあります)。
法的には上記の通りですが,実際には,相続人の話し合いの結果で決まることが多く,話し合いで決まった場合には法律問題が表面に出てきません。
ただ,万一,法律問題が表面に出てしまった場合には,民法の大原則に立ち返って結論を導き出す必要があります。