カテゴリー別アーカイブ: 相続税

倍率地域の土地の相続税評価②

ここからは、掛け算1回では、土地の評価が完了しない場合を説明したいと思います。
まず、評価倍率表を確認したとしても、評価倍率が記載されていないことがあります。
田や畑については、「比準」、「市比準」、「周比準」と記載されており、具体的な倍率が記載されていないことがあります。
「比準」、「市比準」、「周比準」とされている田、畑については、近傍宅地の評価額に比準して、評価額を算定することとなります。
三重県でも、このような算定方法を用いるべき土地が散見されます。

近傍宅地の評価額とは、近隣の標準的な宅地の評価額のことを言います。
基本的には、各市町村は、各土地の固定資産税評価額を算定する際、この地域の標準的な宅地の評価額は1㎡あたり●円の定めています。この金額をベースに、近傍宅地の評価額を算定することとなります。

標準的な宅地の固定資産評価額については、全国地価マップ(URL)で確認することができることがあります。
全国地価マップを確認すると、各路線に面する宅地の1㎡あたりの固定資産評価額が記載されていることがありますので、この数値に基づいて評価を行うこととなります。
それでは、全国地価マップに路線価が記載されていない場合は、どうすれば良いのでしょうか?このような場合には、各市町村の資産税課に問い合わせを行い、評価の対象となる土地の地番を伝え、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額を確認することとなります(全国地価マップには近隣地域の単価も記載されていますが、各単価が妥当する範囲がどこまでかが分からないため、評価のベースにし難いです)。

全国地価マップを利用する場合には、注意するべき事項があります。
それは、全国地価マップに記載されている評価額については、相続の発生時期によっては、時点修正がなされることがあるということです。
相続の発生日が時点修正の対象になっている場合は、記載された修正率を乗じた評価額を利用する必要があります。

以上の手順により、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額を確認することができます。
次に、評価倍率表を確認し、宅地の1㎡あたりの固定資産評価額に、宅地の倍率を乗じます。
宅地の1㎡あたりの固定資産評価額は、そのまま相続税評価に用いることはできず、宅地の倍率を乗じることにより、相続税評価額への切り替えを行う必要があります。
この点は忘れがちですが、必ず、宅地の倍率を乗じる手順を踏む必要があります。
これにより、1㎡あたりの近傍宅地の評価額を算定することができます。

その後、土地の形状、公法規制等を踏まえて、近傍宅地の評価額を増減額修正し、各土地の評価額を算定することとなります。
この作業は、路線価地域における評価方法と同じです。
なお、路線価地域の場合は、路線毎に、ビル街地区、高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区、中小工業地区、大工業地区が設定されており、どれに該当するかにより、増減額修正の割合が異なってくることがありますが、近傍宅地の評価額をベースとして評価する場合は、普通住宅地区に該当するものとして、増減額修正を行います。

このように、倍率地域内の土地であっても、倍率表で「比準」、「市比準」、「周比準」とされている場合には、路線価地域内の土地のとほぼ同様の評価方法を用いなければならない場合があります。

倍率地域の土地の相続税評価①

相続税申告のため、土地の評価を行う場合には、大別して、2つの評価方法が用いられます。
1つ目は、路線価地域における評価方法であり、2つ目は、倍率地域における評価方法です。

路線価地域では、国税庁が公表している、各路線に面する土地の1㎡あたりの土地の単価(路線価)をベースに、土地の形状、公法規制等を考慮しつつ、土地の評価額を算定します。
倍率地域では、市町村が設定している固定資産評価額に、国税庁が公表している倍率を乗じることにより、土地の評価額を算定します。
一般に、路線価地域については、土地の形状、公法規制等を踏まえて評価額を算定する必要があり、算定が複雑であるのに対し、倍率地域については、掛け算を1回行うだけであり、固定資産評価額さえ分かれば、座りながらでも評価額を算定することができるため、算定が容易であるとの説明がなされることがあります。
ただ、実際には、路線価地域についても、複雑な算定方法を用いなければ、評価ができなかったり、高めの評価額で申告することとなってしまったりすることがあります。
倍率地域については掛け算を1回行うだけであるという甘い考えで臨むのは、妥当ではない考え方だと思います。

ここでは、倍率地域における土地の評価方法について、説明を行いたいと思います。

まず、倍率地域における一般的な評価の流れについて説明したいと思います。
評価額を算定するにあたっては、各土地の固定資産評価額についての情報と、評価倍率についての情報を得る必要があります。

各土地の固定資産評価額については、毎年4月に、各市町村役場から届く固定資産税の納税通知書に記載されています。
ただ、自治体によっては、免税点未満の評価額の不動産については、固定資産税の納税通知書には記載していないことがあります。このような場合には、各市町村役場において、名寄帳を取得し、免税点未満の評価額の不動産についての情報を得る必要があることがあります(なお、松阪市ですと、名寄帳の名称が使用されていますが、他の市町村では、固定資産課税台帳記載事項証明書等、異なる名称が使用されている場合があります)。
また、被相続人が共有している不動産、被相続人のさらに先代名義のままになっている不動産については、別個に固定資産税の納税通知書が送付されることとなります。このため、共有している不動産、先代名義の不動産についての固定資産税の納税通知書が別に届いていないか、注意する必要があります。
さらに、登記簿上は被相続人が所有する不動産が存在するにもかかわらず、市町村役場が別の人の名義として課税台帳に記録していたり、被相続人名義として課税台帳に記録されているものの、旧住所や旧姓で記録されているため、固定資産税の納税通知が届かない不動産が存在することもあります。この場合には、市町村役場に、登記簿や住民票、戸籍を提出し、課税台帳を修正してもらった上で、名寄帳を新たに発行してもらわなけれなならないこともあります。
これらの作業を行い、各土地の固定資産評価額に関する情報を一通り入手することとなります。

評価倍率については、国税庁のホームページで公表されている倍率表で確認することができます。
令和4年1月1日から令和4年12月31日までに相続が発生した場合には、令和4年度の倍率表を参照することとなります。
倍率表については、令和4年度の倍率表については、翌令和5年7月初旬に公表されるというように、翌年の7月初旬に公表されることとなっています。
ホームページにおいて、該当する市町村の倍率表を確認し、該当する地域、地目の倍率をもって、評価を行うこととなります。
ある土地についてどの倍率を用いるかについては、多くの場合には容易に判別することができますが、時には、「県道●号線以南」、「●団地」というように土地勘がないと判別がつきにくいことがあります。このような場合には、まずは、地図等で土地の所在場所を正確に確認し、判別を試みることとなりますが、どうしても判断に迷う場合は、管轄の税務署に問い合わせ、どの倍率を用いるべきかを確認することもあります。
また、ある土地が市街化区域であるか市街化調整区域であるか、農業振興地域内の農用地区域内であるか地区域外であるかにより、該当する倍率が異なってくることもあります。このような場合には、各市町村のホームページで公表されている都市計画図、eMAFF農地ナビ(eMAFF農地ナビに記載がない場合には、各市町村の農業政策課への照会)等により、ある土地がいずれの地域に該当するかを確認することとなります。

倍率地域内の土地については、このようにして固定資産評価額についての情報、評価倍率についての情報を得て、これらを掛け算することにより、評価額を算定することとなります。

寄付と相続税

1 寄付により相続税は軽減される

相続等によって財産を取得した人が、相続等によって取得した財産を寄付すると、相続税が軽減されることとなります。

相続税は、相続等によって取得した財産について、一定の税率を乗じることで計算されます。

相続等によって財産を取得した人が寄付を行うと、寄付した財産の価額を、相続等によって取得した財産から控除計算することができます。

このため、相続税は、寄付した財産の価額×税率の分、軽減されることとなります。

以下では、こうした相続税の軽減がどのような場合になされるかを説明したいと思います。

2 寄付控除の要件

寄付した財産の価額の控除が認められるのは、以下の場合です。

① 申告期限までに、寄付の手続を完了すること  
② 相続等によって取得した財産を寄附すること  
③ 寄付先が国、地方公共団体、特定公益増進法人、認定NPO法人のいずれかであること

①から、申告期限後に寄付を行ったとしても、寄付の控除は認められないこととなります。

必ず、申告期限までに寄付の手続を完了している必要があります。

寄付の手続が完了すると、証明書が発行されますので、これを申告書に添付して提出します。

②から、相続等によって取得した財産から寄付を行う必要があることとなります。

遺言による遺贈を受けない財産や、生命保険金から寄付を行った場合にも、控除を受けることができます。

注意しなければならないのは、相続等によって取得した財産を売却し、売却代金から支払うと、②には、該当せず、寄付の控除を行うことができなくなるということです。

たとえば、不動産を相続した場合には、不動産をそのまま寄付した場合は控除を用いることができますが、不動産を売却し、売却代金から寄付を行った場合は控除を用いることができないこととなります。

③から、控除を用いることができる寄付先が限定されています。

地方公共団体も寄付の対象になり、三重でも、県庁に問合せを行い、寄付を行うことも可能となっています。

国、地方公共団体については明確ですが、特定公益増進法人、認定NPO法人についてはどのような団体がこれに該当するかが明確ではありません。

控除を用いることを考えている場合は、事前に、寄付先の団体に問い合わせ、控除を用いることができるかどうかを確認した方が良いでしょう。

3 寄付控除を利用できなくなる場合

寄付控除を用いて相続税の申告を行ったとしても、以下の場合等には、控除の利用が認められなくなってしまいますので、注意が必要です。

① 寄付を受けた日から2年以内に、寄付先が特定公益増進法人、認定NPO法人に該当しなくなった場合  
② 寄付を受けた日から2年以内に、寄付先が寄付を受けた財産を公益目的に利用していない場合

管轄税務署3

税金については、申告書の提出と納付の手続を分けて行う必要があります。

相続税についても、申告書の提出とは別に、納付の手続を行う必要があります。

納付の手続については、複数の方法がありますが、いずれも、納付先の税務署を明記して手続を行う必要があります。

納付先の税務署は、管轄税務署になりますので、相続税の場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。

それでは、納付書に管轄外の税務署を記載してしまい、納付の手続を行ってしまった場合は、どうなるのでしょうか?

改めて、本来の税務署に納付をし直す必要があるのでしょうか?

また、管轄税務署が別の税務署であることが判明した時点で、申告期限が経過してしまっていると、申告期限内に適切に納付の手続がなされていないこととなり、延滞税が課税されることとなってしまうのでしょうか?

納付についても、誤った税務署を納付書に記載して納付の手続を行ったとしても、税務署内で、本来の管轄税務署に納付したとの処理を行ってもらうことができます。

このため、誤った税務署に納付したのが申告期限内であれば、申告期限内に納付の手続が完了しているものと扱われます。

本来の管轄税務署に納付をし直す必要はありませんし、延滞税も課税されません。

三重県内の税務署と三重県外の税務署との間でも、このような処理を行ってもらうことができます。

とはいえ、管轄税務署の側から見ると、税務署内で処理がなされるまでは、申告書の提出だけがなされ、納付の手続は行われていないものと捉えられてしまいます。

このため、管轄外の税務署に納付の手続を行ってしまった場合は、速やかに、管轄税務署にその旨を伝えた方が良いと思います。

また、印象も良くないでしょうから、できる限り、管轄税務署がどこであるかの検討は慎重に行うべきでしょう。

管轄税務署2

相続税の管轄税務署がどこであるかについては、判断に迷うことがしばしばあります。

それでは、ある税務署が管轄税務署だと考え、その税務署に申告書を提出したものの、後日、他の税務署が管轄税務署であることが判明した場合は、どうなるのでしょうか?

他の税務署が管轄税務署であることが判明した時点で、申告期限が経過してしまっていると、管轄税務署に申告書が提出されていないこととなります。

このような場合には、申告期限を徒過したものと扱われ、無申告加算税が課税されることとなってしまうのでしょうか?

実のところ、管轄外の税務署に申告書が提出された場合であっても、税務署内で、申告書を管轄税務署に回付するとの処理がなされます。

この場合、管轄外の税務署に申告書が提出された日が、申告書の提出がなされた日であると扱われることとなります。

このため、申告期限内に管轄外の税務署に申告書を提出してしまったとしても、申告期限を遵守して申告書の提出がなされたと扱われることとなります。

したがって、無申告加算税が課税されることもありません。

余談ながら、裁判所に、たとえば控訴状を提出する場合にも、誤って、管轄外の裁判所に控訴状の提出がなされることがあります。

この場合、裁判所内で、管轄裁判所に控訴状を回付するとの処理を行うこともできますが、この場合には、実際に管轄裁判所に控訴状が届いた日に、控訴がなされたものと扱われます。

このため、管轄外の裁判所に控訴状を提出したのが控訴期限内であったとしても、管轄裁判所に控訴状が届いたのが控訴期限後になってしまうと、期限内に控訴がなされなかったものと扱われ、控訴却下となってしまいます。

この点では、税務署の方が、救済の幅が広いと言うことができます。

とはいえ、管轄外の税務署に申告書を提出してしまうと、申告書の処理に時間がかかってしまいますし、おそらく印象も良くないでしょうから、管轄税務署がとこであるかを慎重に判断して、申告書を提出すべきでしょう。

三重県だと、裁判所、税務署、法務局で、管轄の分け方が異なっている地域もありますので、注意が必要です。

管轄税務署1

相続税申告を行う際には、管轄税務署に申告書を提出する必要があることとなっています。

そして、相続税の管轄税務署は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。

最後の住所地は、被相続人の最後の生活の本拠地です。

多くの場合は、被相続人の住民票が置かれていた場所が被相続人の最後の住所地であることとなると思います。

もっとも、現実には、最後の住所がどこにあったか、判断に迷うことがあります。

1 被相続人が三重県内の市町村に住民票を置き、そこで生活していたものの、三重県外の病院に長期入院していた場合

この場合は、入院先の病院は、治療のためにいる場所に過ぎず、生活の本拠にはなり得ないと考えられます。

このため、被相続人が生活の本拠としていた、三重県内の税務署が管轄税務署になります。

2 被相続人が三重県内の市町村に住民票を置き、そこで生活していたが、相続時に一時的に単身赴任していた場合

多くの場合、一時的に単身赴任先に転居していたに過ぎず、単身赴任が終了した後は本来の住所に戻ってくることが予定されているでしょうから、本来の住所を管轄する三重県内の税務署が管轄税務署になると考えられます。

3 被相続人が三重県内の市町村に住民票を置き、そこで生活していたが、その後、三重県外の介護施設に入所した場合

多くの場合、介護施設でそのまま生活を続けることを予定しており、従来の住所に戻ることは予定していないでしょうから、生活の本拠を介護施設に移した考えられ、介護施設の所在地を管轄する三重県外の税務署が管轄税務署になると考えられます。

4 被相続人が三重県内の市町村に住民票を置いていたが、実際には、三重県外で生活していた場合

住民票上の住所地以外の場所で生活している方は、しばしばいらっしゃいます。

この場合は、実態として、生活の本拠となっている場所が住所地となりますので、三重県外の生活地を管轄する税務署が管轄税務署になる可能性があります。

もっとも、生活の本拠がどこにあるかを判断するに当たっては、居住の経緯、将来想定していた居住場所、生活実態、経済活動の状況等、諸般の事情を考慮する必要があります。

権利落ちと上場株式の相続税評価

1 上場株式の相続税評価の方法
上場株式については、以下の4つの金額のうち、最も低い金額が評価額となり、相続税が課税されることとなります。

・ 被相続人が亡くなった日の終値

・ 被相続人が亡くなった月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった前月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった前々月の終値の平均

2 権利落ちがある場合の例外
以上の原則に対して、権利落ちがあった場合には、権利落ちよりも前の取引日の終値をもって、被相続人が亡くなった日の終値とします。

そもそも、権利落ちとは何なのでしょうか?
これは、投資を行っていると、よく知っている方が多いと思いますが、一般的な弁護士にとっては、馴染みが薄い概念だと思います。

株式を保有していると、新株の割当や配当等、一定の利益を得られることがあります。
このような新株の割当や配当は、権利確定日に株式を保有している人に対してなされます。
配当に関しては、多くの場合、3月、6月、9月、12月の最後の平日に株式を保有している人に対してなされます(一般には、3月、9月の最後の平日に配当を行う会社が多いでしょう)。

しかし、実際には、権利確定日の当日に株式を取得したとしても、新株の割当や配当を受けることはできません。
株式を取得してから株主名簿に株主として名前が記載されるまで、現在でも、2営業日の日数を要するからです。
このため、新株の割当や配当を受けるには、権利確定日の2営業日前(これを権利付最終日といいます)までに株式を取得する必要があります。

そうすると、権利確定日の1営業日前に株式を取得した場合と、権利確定日の当日に株式を取得した場合には、権利確定日までに株式を取得したにもかかわらす、株主名簿に株主として記載されていないという手続上の理由から、新株の割当や配当を受けることができないこととなります。
このような事情から、理論上は、権利確定日の1営業日前(これを権利落ち日といいます)と権利確定日の当日には、株価が本来よりも低い金額で値動きするといわれています。
このように、株主名簿に株主として記載されていないという手続上の理由により、新株の割当や配当を受ける権利が消滅することを権利落ちといいます。

このような事情から、被相続人が亡くなったのが権利確定日の1営業日前(権利落ち日)または権利確定日の当日である場合は、本来の株価で評価を行うため、権利確定日の2営業前の終値をもって、被相続人が亡くなった日の終値とします。
配当に関しては、被相続人が亡くなったのが、3月、6月、9月、12月の最後の平日、最後から2番目の平日である場合に、権利落ちの問題が生じ、権利確定日の2営業日前の終値で評価しなければならなくなる可能性があります。

※ もちろん、業績不振等の理由により実際に配当がなされていなければ、権利落ちの問題が生じることはありません。

上場株式の相続税評価

1 上場株式の評価方法
上場株式が相続財産に含まれている場合には、銘柄ごとに相続時点の評価を算定する必要があります。
上場株式については、刻一刻と値動きしますので、いつの時点の価格で評価すべきかが問題になります。

上場株式については、以下の4つの金額のうち、最も低い金額について、相続税が課税されることとなっています。

・ 被相続人が亡くなった日の終値

・ 被相続人が亡くなった月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均

2 被相続人が亡くなった日の終値
被相続人が亡くなった日の終値については、ヤフーファイナンスのホームページの、時系列で確認することができます。

それでは、被相続人が亡くなった日が土日祝日であり、取引がなされていない日である場合は、どうなるのでしょうか?

亡くなった日が土日祝日で、取引のない日である場合は、被相続人が亡くなった日に最も近い日の終値で評価します。
たとえば、被相続人が亡くなった日が土曜日であり、金曜日が平日でしたら、金曜日の終値で評価します。
被相続人が亡くなった日が日曜日であり、月曜日が平日でしたら、月曜日の終値で評価します。

被相続人が亡くなった日に最も近い日の終値が2つある場合は、これらの終値の平均をもって評価します。

3 被相続人が亡くなった月、その前月、前々月の終値の平均
被相続人が亡くなった日の終値の平均、被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均、被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均については、日本取引所グループのホームページの、月間相場表(投信等相場表)で確認することができます。
なお、月間相場表(投信等相場表)に記載された終値の平均については、小数点以下の部分を切り捨てた上で、株数を乗じる計算を行うことができます。

4 最後に
このように、上場株式については、月毎の平均額を参照するという独特の方法で相続税評価を行うこととなっています。
したがって、相続税申告書に記載されている価格は、必ずしも、相続開始日の評価額ではないこととなります。
この点については、税理士は熟知していますが、弁護士は必ずしも熟知していません。
このため、訴訟においても、相手方の弁護士が、「相続税申告書に記載された上場株式の価格=相続開始日の評価額」であるとの主張を行い、当方が、「相続税申告書に記載された上場株式の価格≠相続開始日の評価額」であるとの指摘を行うといったやり取りを行うことが、しばしばあります。

障害者控除と相続税

1 障害者控除とは
相続人や受遺者(遺言により遺贈を受けた人)が障害者である場合には、その相続人や受遺者に課税される相続税が一定額軽減されます。
障害者が生命保険金の受取人に指定されている場合も、生命保険金のうち非課税限度額を超える部分について課税される相続税は一定額軽減されます。
このような制度を障害者控除といいます。

2 障害者控除の要件
障害者控除を用いることができるのは、次の要件を満たす場合です。

① 相続や遺贈により財産を取得した時点で特別障害者または一般障害者であること

② 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること

①から、相続や遺贈の時点、つまり、被相続人が亡くなった時点で特別障害者または一般障害者であることが要件になります。
特別障害者または一般障害者にあたるかどうかは、次の基準で判断されることとなります。

・ 精神障害者保健福祉手帳
1級→特別障害者
2級、3級→一般障害者

・ 身体障害者手帳
1級、2級→特別障害者
3級、4級、5級、6級→一般障害者

・ 療育手帳
重度の知的障害者→特別障害者
上記以外の知的障害者→一般障害者

・ 寝たきりの状態にある者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者

・ 障害のある65歳以上の者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者

・ 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(成年被後見人を含む)
特別障害者

②から、障害者が法定相続人である場合に限り、障害者控除を用いることができることとなります。
なお、相続放棄が行われた場合であっても、相続放棄がなかったものとして、法定相続人に当たるかどうかが判断されることとなります。
このため、法定相続人である障害者が相続放棄を行ったとしても、障害者控除を用いることができることとなります。

3 障害者控除の額
障害者控除により、相続税が以下の金額で減額されることとなります。
障害者控除は、いわゆる税額控除に該当し、控除額がそのまま相続税が差し引かれることとなりますので、大きく相続税が減額される可能性があります。

・ 特別障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×20万円

・ 一般障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×10万円

※ 相続や遺贈の時点の年齢については、1年未満の端数は切り捨てとなります。

たとえば、被相続人が亡くなった時点で35歳10か月であった場合、相続の時点の年齢は切り捨てにより35歳になりますので、以下のとおりとなります。

・ 特別障害者の場合
(85歳-35歳)×20万円=1000万円

・ 一般障害者の場合
(85歳-35歳)×10万円=500万円

このように、障害者控除は、大きな税額軽減の効果がありますが、見逃されがちな制度でもあります。
三重県の案件でも、当法人が関与する前の段階では、障害者控除を見逃して申告がなされていることが時々あります。
このような場合には、当法人において、更正の請求を行い、相続税の還付のお手伝いをさせていただくこともあります。

4 障害者控除額が障害者に課税される相続税額よりも大きく、余りが生じる場合
上記により計算された障害者控除額が、障害者に課税される相続税額よりも大きく、控除額の余りが生じることがあります。
このような控除額の余りは、さらに、障害者の扶養義務者に課税される相続税から控除することができます。
扶養義務者は、以下のとおりです。

・ 配偶者

・ 直系血族

・ 兄弟姉妹

・ 3親等内の親族のうち、家庭裁判所が扶養義務を負わせた者

たとえば、障害者に課税される相続税額が200万円であり、障害者控除額が500万円でしたら、300万円の控除額の余りが生じることとなります。
この300万円の控除額の余りは、さらに、配偶者、直系血族、兄弟姉妹等に課税される相続税から控除することができます。

建物更生共済契約の契約者と掛金の負担者が異なる場合の相続税

1 建物更生共済と相続税
建物更生共済は、契約者名義の建物や家財について火災や自然災害による損害が生じた場合に、共済金の支払がなされる共済契約です。
機能としては、損害保険と類似しています。

ただ、建物更生共済契約には、通常の損害保険と異なる部分があります。
通常の損害保険は、掛け捨てですので、解約したとしても解約返戻金がほとんど発生しないことが多いですし、満期が到来したとしても満期共済金の支払がなされないことが多いです。
他方、建物更生共済の場合は、解約すると解約返戻金を受け取ることができますし、満期が到来すると満期共済金を受け取ることができます。

このように、建物更生共済については、契約に基づいて一定の支払がなされるという意味において、資産性があります。
このため、被相続人が建物更生共済の契約者になっていた場合には、相続税の課税対象になることとなります。
この場合、相続人は、仮に建物更生共済を解約したときには、解約返戻金を受け取ることができる法的地位を引き継ぐこととなりますので、相続時点の解約返戻金額について、相続税が課税されることとなります。

三重県の案件では、建物更生共済についても、極めて頻繁に登場しますので、注意が必要な財産になります。

2 建物更生共済契約の契約者と掛金の負担者が異なる場合
それでは、被相続人が、建物更生共済の契約者にはなっていなかったものの、建物更生共済の掛金の負担者になっていた場合には、どうなるのでしょうか?
上記と同様に、相続税の課税がなされることとなるのでしょうか?

生命保険の場合は、被相続人が、生命保険契約の契約者になっていなかったものの、生命保険料の負担者になっていた場合には、負担した割合に応じて、被相続人が契約者になっていた生命保険と同様の課税がなされることとなっています。

他方、損害保険の場合は、被相続人が掛金の負担者になっていた場合に、被相続人が契約者になっていた損害保険と同様の課税がなされると定めている規定は存在しません。
このため、被相続人が掛金の負担者になっていたに過ぎない場合は、ただちに、相続税の課税がなされるわけではないということになりそうです。
ただ、毎年、被相続人が支払っていた掛金について、被相続人から規定の契約者への贈与がなされていたのみであることとなります(このため、被相続人が亡くなる3年前から、被相続人が亡くなるまでに生じた掛金については、相続開始前3年以内の贈与加算の対象になります)。

もっとも、建物更生共済契約についての手続が専ら被相続人との間でなされており、契約者自身は、手続にはほとんど関与しておらず、契約内容すら把握していないような場合には、結論が異なってくるでしょう。
このような場合には、被相続人が契約者の名義を借りていたに過ぎず、実質的には被相続人が契約者であるとの判断がなされ、建物更生共済契約が相続税の課税対象になる可能性があるでしょう。