カテゴリー別アーカイブ: 相続税

管轄税務署3

税金については、申告書の提出と納付の手続を分けて行う必要があります。

相続税についても、申告書の提出とは別に、納付の手続を行う必要があります。

納付の手続については、複数の方法がありますが、いずれも、納付先の税務署を明記して手続を行う必要があります。

納付先の税務署は、管轄税務署になりますので、相続税の場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。

それでは、納付書に管轄外の税務署を記載してしまい、納付の手続を行ってしまった場合は、どうなるのでしょうか?

改めて、本来の税務署に納付をし直す必要があるのでしょうか?

また、管轄税務署が別の税務署であることが判明した時点で、申告期限が経過してしまっていると、申告期限内に適切に納付の手続がなされていないこととなり、延滞税が課税されることとなってしまうのでしょうか?

納付についても、誤った税務署を納付書に記載して納付の手続を行ったとしても、税務署内で、本来の管轄税務署に納付したとの処理を行ってもらうことができます。

このため、誤った税務署に納付したのが申告期限内であれば、申告期限内に納付の手続が完了しているものと扱われます。

本来の管轄税務署に納付をし直す必要はありませんし、延滞税も課税されません。

三重県内の税務署と三重県外の税務署との間でも、このような処理を行ってもらうことができます。

とはいえ、管轄税務署の側から見ると、税務署内で処理がなされるまでは、申告書の提出だけがなされ、納付の手続は行われていないものと捉えられてしまいます。

このため、管轄外の税務署に納付の手続を行ってしまった場合は、速やかに、管轄税務署にその旨を伝えた方が良いと思います。

また、印象も良くないでしょうから、できる限り、管轄税務署がどこであるかの検討は慎重に行うべきでしょう。

管轄税務署2

相続税の管轄税務署がどこであるかについては、判断に迷うことがしばしばあります。

それでは、ある税務署が管轄税務署だと考え、その税務署に申告書を提出したものの、後日、他の税務署が管轄税務署であることが判明した場合は、どうなるのでしょうか?

他の税務署が管轄税務署であることが判明した時点で、申告期限が経過してしまっていると、管轄税務署に申告書が提出されていないこととなります。

このような場合には、申告期限を徒過したものと扱われ、無申告加算税が課税されることとなってしまうのでしょうか?

実のところ、管轄外の税務署に申告書が提出された場合であっても、税務署内で、申告書を管轄税務署に回付するとの処理がなされます。

この場合、管轄外の税務署に申告書が提出された日が、申告書の提出がなされた日であると扱われることとなります。

このため、申告期限内に管轄外の税務署に申告書を提出してしまったとしても、申告期限を遵守して申告書の提出がなされたと扱われることとなります。

したがって、無申告加算税が課税されることもありません。

余談ながら、裁判所に、たとえば控訴状を提出する場合にも、誤って、管轄外の裁判所に控訴状の提出がなされることがあります。

この場合、裁判所内で、管轄裁判所に控訴状を回付するとの処理を行うこともできますが、この場合には、実際に管轄裁判所に控訴状が届いた日に、控訴がなされたものと扱われます。

このため、管轄外の裁判所に控訴状を提出したのが控訴期限内であったとしても、管轄裁判所に控訴状が届いたのが控訴期限後になってしまうと、期限内に控訴がなされなかったものと扱われ、控訴却下となってしまいます。

この点では、税務署の方が、救済の幅が広いと言うことができます。

とはいえ、管轄外の税務署に申告書を提出してしまうと、申告書の処理に時間がかかってしまいますし、おそらく印象も良くないでしょうから、管轄税務署がとこであるかを慎重に判断して、申告書を提出すべきでしょう。

三重県だと、裁判所、税務署、法務局で、管轄の分け方が異なっている地域もありますので、注意が必要です。

管轄税務署1

相続税申告を行う際には、管轄税務署に申告書を提出する必要があることとなっています。

そして、相続税の管轄税務署は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。

最後の住所地は、被相続人の最後の生活の本拠地です。

多くの場合は、被相続人の住民票が置かれていた場所が被相続人の最後の住所地であることとなると思います。

もっとも、現実には、最後の住所がどこにあったか、判断に迷うことがあります。

1 被相続人が三重県内の市町村に住民票を置き、そこで生活していたものの、三重県外の病院に長期入院していた場合

この場合は、入院先の病院は、治療のためにいる場所に過ぎず、生活の本拠にはなり得ないと考えられます。

このため、被相続人が生活の本拠としていた、三重県内の税務署が管轄税務署になります。

2 被相続人が三重県内の市町村に住民票を置き、そこで生活していたが、相続時に一時的に単身赴任していた場合

多くの場合、一時的に単身赴任先に転居していたに過ぎず、単身赴任が終了した後は本来の住所に戻ってくることが予定されているでしょうから、本来の住所を管轄する三重県内の税務署が管轄税務署になると考えられます。

3 被相続人が三重県内の市町村に住民票を置き、そこで生活していたが、その後、三重県外の介護施設に入所した場合

多くの場合、介護施設でそのまま生活を続けることを予定しており、従来の住所に戻ることは予定していないでしょうから、生活の本拠を介護施設に移した考えられ、介護施設の所在地を管轄する三重県外の税務署が管轄税務署になると考えられます。

4 被相続人が三重県内の市町村に住民票を置いていたが、実際には、三重県外で生活していた場合

住民票上の住所地以外の場所で生活している方は、しばしばいらっしゃいます。

この場合は、実態として、生活の本拠となっている場所が住所地となりますので、三重県外の生活地を管轄する税務署が管轄税務署になる可能性があります。

もっとも、生活の本拠がどこにあるかを判断するに当たっては、居住の経緯、将来想定していた居住場所、生活実態、経済活動の状況等、諸般の事情を考慮する必要があります。

権利落ちと上場株式の相続税評価

1 上場株式の相続税評価の方法
上場株式については、以下の4つの金額のうち、最も低い金額が評価額となり、相続税が課税されることとなります。

・ 被相続人が亡くなった日の終値

・ 被相続人が亡くなった月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった前月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった前々月の終値の平均

2 権利落ちがある場合の例外
以上の原則に対して、権利落ちがあった場合には、権利落ちよりも前の取引日の終値をもって、被相続人が亡くなった日の終値とします。

そもそも、権利落ちとは何なのでしょうか?
これは、投資を行っていると、よく知っている方が多いと思いますが、一般的な弁護士にとっては、馴染みが薄い概念だと思います。

株式を保有していると、新株の割当や配当等、一定の利益を得られることがあります。
このような新株の割当や配当は、権利確定日に株式を保有している人に対してなされます。
配当に関しては、多くの場合、3月、6月、9月、12月の最後の平日に株式を保有している人に対してなされます(一般には、3月、9月の最後の平日に配当を行う会社が多いでしょう)。

しかし、実際には、権利確定日の当日に株式を取得したとしても、新株の割当や配当を受けることはできません。
株式を取得してから株主名簿に株主として名前が記載されるまで、現在でも、2営業日の日数を要するからです。
このため、新株の割当や配当を受けるには、権利確定日の2営業日前(これを権利付最終日といいます)までに株式を取得する必要があります。

そうすると、権利確定日の1営業日前に株式を取得した場合と、権利確定日の当日に株式を取得した場合には、権利確定日までに株式を取得したにもかかわらす、株主名簿に株主として記載されていないという手続上の理由から、新株の割当や配当を受けることができないこととなります。
このような事情から、理論上は、権利確定日の1営業日前(これを権利落ち日といいます)と権利確定日の当日には、株価が本来よりも低い金額で値動きするといわれています。
このように、株主名簿に株主として記載されていないという手続上の理由により、新株の割当や配当を受ける権利が消滅することを権利落ちといいます。

このような事情から、被相続人が亡くなったのが権利確定日の1営業日前(権利落ち日)または権利確定日の当日である場合は、本来の株価で評価を行うため、権利確定日の2営業前の終値をもって、被相続人が亡くなった日の終値とします。
配当に関しては、被相続人が亡くなったのが、3月、6月、9月、12月の最後の平日、最後から2番目の平日である場合に、権利落ちの問題が生じ、権利確定日の2営業日前の終値で評価しなければならなくなる可能性があります。

※ もちろん、業績不振等の理由により実際に配当がなされていなければ、権利落ちの問題が生じることはありません。

上場株式の相続税評価

1 上場株式の評価方法
上場株式が相続財産に含まれている場合には、銘柄ごとに相続時点の評価を算定する必要があります。
上場株式については、刻一刻と値動きしますので、いつの時点の価格で評価すべきかが問題になります。

上場株式については、以下の4つの金額のうち、最も低い金額について、相続税が課税されることとなっています。

・ 被相続人が亡くなった日の終値

・ 被相続人が亡くなった月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均

・ 被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均

2 被相続人が亡くなった日の終値
被相続人が亡くなった日の終値については、ヤフーファイナンスのホームページの、時系列で確認することができます。

それでは、被相続人が亡くなった日が土日祝日であり、取引がなされていない日である場合は、どうなるのでしょうか?

亡くなった日が土日祝日で、取引のない日である場合は、被相続人が亡くなった日に最も近い日の終値で評価します。
たとえば、被相続人が亡くなった日が土曜日であり、金曜日が平日でしたら、金曜日の終値で評価します。
被相続人が亡くなった日が日曜日であり、月曜日が平日でしたら、月曜日の終値で評価します。

被相続人が亡くなった日に最も近い日の終値が2つある場合は、これらの終値の平均をもって評価します。

3 被相続人が亡くなった月、その前月、前々月の終値の平均
被相続人が亡くなった日の終値の平均、被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均、被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均については、日本取引所グループのホームページの、月間相場表(投信等相場表)で確認することができます。
なお、月間相場表(投信等相場表)に記載された終値の平均については、小数点以下の部分を切り捨てた上で、株数を乗じる計算を行うことができます。

4 最後に
このように、上場株式については、月毎の平均額を参照するという独特の方法で相続税評価を行うこととなっています。
したがって、相続税申告書に記載されている価格は、必ずしも、相続開始日の評価額ではないこととなります。
この点については、税理士は熟知していますが、弁護士は必ずしも熟知していません。
このため、訴訟においても、相手方の弁護士が、「相続税申告書に記載された上場株式の価格=相続開始日の評価額」であるとの主張を行い、当方が、「相続税申告書に記載された上場株式の価格≠相続開始日の評価額」であるとの指摘を行うといったやり取りを行うことが、しばしばあります。

障害者控除と相続税

1 障害者控除とは
相続人や受遺者(遺言により遺贈を受けた人)が障害者である場合には、その相続人や受遺者に課税される相続税が一定額軽減されます。
障害者が生命保険金の受取人に指定されている場合も、生命保険金のうち非課税限度額を超える部分について課税される相続税は一定額軽減されます。
このような制度を障害者控除といいます。

2 障害者控除の要件
障害者控除を用いることができるのは、次の要件を満たす場合です。

① 相続や遺贈により財産を取得した時点で特別障害者または一般障害者であること

② 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること

①から、相続や遺贈の時点、つまり、被相続人が亡くなった時点で特別障害者または一般障害者であることが要件になります。
特別障害者または一般障害者にあたるかどうかは、次の基準で判断されることとなります。

・ 精神障害者保健福祉手帳
1級→特別障害者
2級、3級→一般障害者

・ 身体障害者手帳
1級、2級→特別障害者
3級、4級、5級、6級→一般障害者

・ 療育手帳
重度の知的障害者→特別障害者
上記以外の知的障害者→一般障害者

・ 寝たきりの状態にある者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者

・ 障害のある65歳以上の者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者

・ 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(成年被後見人を含む)
特別障害者

②から、障害者が法定相続人である場合に限り、障害者控除を用いることができることとなります。
なお、相続放棄が行われた場合であっても、相続放棄がなかったものとして、法定相続人に当たるかどうかが判断されることとなります。
このため、法定相続人である障害者が相続放棄を行ったとしても、障害者控除を用いることができることとなります。

3 障害者控除の額
障害者控除により、相続税が以下の金額で減額されることとなります。
障害者控除は、いわゆる税額控除に該当し、控除額がそのまま相続税が差し引かれることとなりますので、大きく相続税が減額される可能性があります。

・ 特別障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×20万円

・ 一般障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×10万円

※ 相続や遺贈の時点の年齢については、1年未満の端数は切り捨てとなります。

たとえば、被相続人が亡くなった時点で35歳10か月であった場合、相続の時点の年齢は切り捨てにより35歳になりますので、以下のとおりとなります。

・ 特別障害者の場合
(85歳-35歳)×20万円=1000万円

・ 一般障害者の場合
(85歳-35歳)×10万円=500万円

このように、障害者控除は、大きな税額軽減の効果がありますが、見逃されがちな制度でもあります。
三重県の案件でも、当法人が関与する前の段階では、障害者控除を見逃して申告がなされていることが時々あります。
このような場合には、当法人において、更正の請求を行い、相続税の還付のお手伝いをさせていただくこともあります。

4 障害者控除額が障害者に課税される相続税額よりも大きく、余りが生じる場合
上記により計算された障害者控除額が、障害者に課税される相続税額よりも大きく、控除額の余りが生じることがあります。
このような控除額の余りは、さらに、障害者の扶養義務者に課税される相続税から控除することができます。
扶養義務者は、以下のとおりです。

・ 配偶者

・ 直系血族

・ 兄弟姉妹

・ 3親等内の親族のうち、家庭裁判所が扶養義務を負わせた者

たとえば、障害者に課税される相続税額が200万円であり、障害者控除額が500万円でしたら、300万円の控除額の余りが生じることとなります。
この300万円の控除額の余りは、さらに、配偶者、直系血族、兄弟姉妹等に課税される相続税から控除することができます。

建物更生共済契約の契約者と掛金の負担者が異なる場合の相続税

1 建物更生共済と相続税
建物更生共済は、契約者名義の建物や家財について火災や自然災害による損害が生じた場合に、共済金の支払がなされる共済契約です。
機能としては、損害保険と類似しています。

ただ、建物更生共済契約には、通常の損害保険と異なる部分があります。
通常の損害保険は、掛け捨てですので、解約したとしても解約返戻金がほとんど発生しないことが多いですし、満期が到来したとしても満期共済金の支払がなされないことが多いです。
他方、建物更生共済の場合は、解約すると解約返戻金を受け取ることができますし、満期が到来すると満期共済金を受け取ることができます。

このように、建物更生共済については、契約に基づいて一定の支払がなされるという意味において、資産性があります。
このため、被相続人が建物更生共済の契約者になっていた場合には、相続税の課税対象になることとなります。
この場合、相続人は、仮に建物更生共済を解約したときには、解約返戻金を受け取ることができる法的地位を引き継ぐこととなりますので、相続時点の解約返戻金額について、相続税が課税されることとなります。

三重県の案件では、建物更生共済についても、極めて頻繁に登場しますので、注意が必要な財産になります。

2 建物更生共済契約の契約者と掛金の負担者が異なる場合
それでは、被相続人が、建物更生共済の契約者にはなっていなかったものの、建物更生共済の掛金の負担者になっていた場合には、どうなるのでしょうか?
上記と同様に、相続税の課税がなされることとなるのでしょうか?

生命保険の場合は、被相続人が、生命保険契約の契約者になっていなかったものの、生命保険料の負担者になっていた場合には、負担した割合に応じて、被相続人が契約者になっていた生命保険と同様の課税がなされることとなっています。

他方、損害保険の場合は、被相続人が掛金の負担者になっていた場合に、被相続人が契約者になっていた損害保険と同様の課税がなされると定めている規定は存在しません。
このため、被相続人が掛金の負担者になっていたに過ぎない場合は、ただちに、相続税の課税がなされるわけではないということになりそうです。
ただ、毎年、被相続人が支払っていた掛金について、被相続人から規定の契約者への贈与がなされていたのみであることとなります(このため、被相続人が亡くなる3年前から、被相続人が亡くなるまでに生じた掛金については、相続開始前3年以内の贈与加算の対象になります)。

もっとも、建物更生共済契約についての手続が専ら被相続人との間でなされており、契約者自身は、手続にはほとんど関与しておらず、契約内容すら把握していないような場合には、結論が異なってくるでしょう。
このような場合には、被相続人が契約者の名義を借りていたに過ぎず、実質的には被相続人が契約者であるとの判断がなされ、建物更生共済契約が相続税の課税対象になる可能性があるでしょう。

JA共済と相続税

1 JA共済も相続税の課税対象になることがある
被相続人がJAに貯金を有していた場合には、被相続人がJA共済に加入していたかどうかを確認した方が良いでしょう。
三重県の相続税の案件では、JA共済に加入されている例も多いです。

JA共済は、組合員が共済掛金を拠出して共同の財産を準備しておき、不測の事故(死亡、入院、火災、自然災害等)があった場合には、共済金を支払うこととしているものです。
機能としては、保険と類似しています。

共済の加入の有無については、一定の書類を提出した上でJAに問い合わせを行うことで確認することができます。
また、通帳に共済掛金の引落の記載があれば、共済に加入している可能性があります。

被相続人がJA共済に加入している場合には、JA共済について相続税の課税がなされるかどうかに注意する必要があります。
どのような課税がなされるかは、共済の種類によって違ってきます。
以下では、相続税申告の場面で注意が必要なものをまとめたいと思います。

2 生命共済
被共済者が亡くなった場合に、共済金の受取人に共済金が支払われるものです。
生命保険と同様のものになりますので、生命保険と同様に相続税の課税がなされることとなります。

被相続人が被共済者になっており、被相続人が亡くなったことにより生命共済金の支払がなされた場合には、生命保険金と同様に相続税が課税されます。
したがって、相続人が共済金を受け取った場合には、500万円×法定相続人数までは相続税が非課税となりますが、これを超える場合は超える部分に限って相続税が課税されます。
相続人ではない人(相続放棄をした人を含む)が共済金を受け取った場合は、共済金の全額が相続税の課税対象になります。

他方、被相続人以外の人が被共済者になっている場合には、被相続人が亡くなった時点では共済金の支払がなされません。
ただし、生命共済契約を解約した場合には、解約返戻金を受け取ることができます。
このため、相続の発生により、仮に生命共済契約を解約すれば、解約返戻金を受け取ることができる地位を引き継いだものと評価されることとなります。
結局、生命保険契約に関する権利と同様、被相続人が亡くなった時点での解約返戻金額について、相続税が課税されることとなります。

なお、被相続人自身が共済の契約者になっていなかったとしても、共済の掛金を引落が被相続人の口座からなされていた場合には、上記と同じく、相続税が課税される可能性がありますので、注意が必要です。

3 医療共済
共済の契約者が一定の疾病に罹患したり入院したりした場合に、共済金の支払がなされるものです。
医療共済は、基本的には、共済の契約者自身が共済金を受け取る権利を有しています。

被相続人が医療共済の契約者になっており、医療共済金の受取人になっていた場合は、医療共済金は、被相続人自身の財産になります。
したがって、医療共済金は、一般的な財産と同様、相続の課税対象になります。

4 建物更生共済
建物更生共済は、共済の契約者名義の家屋や家財について、火災や自然災害による被害があった場合に、共済金の支払がなされるものです。
通常の損害保険とは異なり、解約すると、解約返戻金が返還され、満期になると、満期共済金の支払がなされます。

被相続人が建物更生共済に加入していた場合には、相続により、仮に建物更生共済契約を解約すれば、解約返戻金を受け取ることができる地位を引き継いだものと評価されます。
このため、生命保険契約に関する権利と同じ考え方により、被相続人が亡くなった時点での解約返戻金額について、相続税が課税されます。

JA貯金が存在する場合の相続税申告

1 JA貯金が存在する場合
相続税申告にあたっては、被相続人名義のすべての預貯金口座を確認し、申告書に記載する必要があります。
被相続人がJAに貯金を有していた場合も、JAの貯金を相続財産として申告書に記載することとなります。
三重県でも、多くの案件で、JAの貯金が相続税の課税対象になっています。

ところで、被相続人がJAに貯金を有していた場合は、何点か、注意しなければならないことがあります。
この点について、以下でまとめたいと思います。

2 貯金を網羅的に記載する
JAの貯金には、様々な種類があります。
申告書には、これらの貯金を網羅的に記載する必要があります。

まず、普通貯金、定期貯金が存在する可能性があることは、他の金融機関と同様です。

これら以外に、JAの口座には、貯蓄貯金、定期積金が存在する可能性があります。
貯蓄貯金は、残高が10万円未満ですと普通貯金と同じ低い利率になりますが、残高が10万円以上になると利率が高くなる貯金です。
定期積金が毎月定期的に一定額の積立がなされる貯金です。
これらについても、相続財産に含まれますので、申告書に記載する必要があります。

3 出資金に注意する
被相続人がJAの貯金を有している場合には、被相続人が出資金を有している可能性があることに注意した方が良いでしょう。

被相続人がJAに出資金を払い込み、JAの組合員になっていることがあります。
この場合、被相続人が亡くなると、脱退して出資金を払い戻すか、一定の条件を満たす相続人に出資金を引き継ぐことができます。
いずれにせよ、出資金も相続財産に該当しますので、申告書に記載する必要があることとなります。

出資金の有無は、一定の書類を提出した上でJAに問い合わせると確認することができます。
また、出資金を有していると、毎年、JAの普通貯金口座に出資配当金が振り込まれていますので、通帳に出資配当金の振込の記載があるがどうかによっても確認することができます。

4 共済に注意する
JAに貯金を有している場合には、JA共済に加入している可能性があります。
JA共済は、保険と同様の位置付けのものになりますが、様々な種類のものがあります。
それぞれの共済の種類によって、生命保険金と同様の課税(500万円×法定相続人数の非課税限度額がある)がなされたり、生命保険契約に関する権利またはその他の財産として課税がなされたりします。

どのような団体に寄付をすると、相続税が軽減されるのでしょうか?

1 相続税の寄付控除
相続等により取得した財産を一定の団体に寄付すると、寄付した財産の価額が相続税の課税価格から控除されるため、相続税が軽減されることとなります。

もっとも、どの団体に寄付しても寄付控除が認められるわけではありません。
一定の団体に寄付を行った場合に限り、寄付控除が認められることとなっています。
以下では、どのような団体が寄付控除の対象になるかの説明を行いたいと思います。

2 寄付控除の対象となる寄付先
① 国
② 地方公共団体
国や地方公共団体については、専用の窓口を設けているところもありますので、その場合は、そこに問い合わせることとなります。
三重県内の市町村も、ホームページ等で、寄付に関する案内を行っているところもあります。

③ 特定公益増進法人
特定公益増進法人とは、教育、科学、文化の振興等への貢献が著しい法人のことをいいます。
一定の種類の法人が特定公益増進法人として定められています。
具体的には、以下のとおりです。

・ 独立行政法人
・ 日本赤十字社
・ 公益財団法人、公益社団法人
・ 学校法人
・ 社会福祉法人

たとえば、日本学生支援機構は独立行政法人、ユニセフは公益財団法人に該当しますので、寄付控除の対象になります。

学校法人については、国公立の学校法人だけでなく、私立の学校法人も寄付控除の対象になります。

独立行政法人については、地方独立行政法人に関しては、病院事業、社会福祉事業等、一定の事業を営むものに限定されています。
介護老人保健施設は、上記の社会福祉事業等を営む地方独立行政法人に該当しますので、寄付控除の対象になります。

なお、特定非営利活動法人は、後述のNPO法人ですので、特定公益増進法人には該当しません。

④ 認定NPO法人
NPO法人については、すべてが寄付控除の対象になるわけではありません。
公益性のある団体であるとの認定がなされたNPO法人のみが、寄付控除の対象になります。

どのNPO法人が認定NPO法人に該当するかは、内閣府のホームページ(https://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/certification)で確認することができます。
実際に寄付するにあたっては、事前に認定NPO法人に該当するかどうかを確認した方が良いでしょう。