カテゴリー別アーカイブ: 相続

不動産の調査

1 不動産の調査の必要性

不動産については、あますことなく調査を行った上で、遺産分割協議や相続登記を行う必要があります。

不動産についての調査が不十分であったため不動産の見逃しが生じ、後日、遺産分割や名義変更が未了であった不動産の存在が明らかになった場合には、協議や登記手続をやり直す必要が生じてしまいます。

しかし、後日、他の相続人に対し、協議や登記手続への協力を依頼したとしても、他の相続人が協力を拒んでくる恐れがあります。

このような場合には、最悪の場合、遺産分割調停等の法的手続を用いなければ、相続を完了することができないといった事態が生じかねません。

このため、相続の際には、被相続人が所有していた不動産を余すことなく調査する必要があります。

弁護士としてご相談をお受けする場合にも、この点の調査は慎重に行う必要があります。

2 不動産の調査方法(固定資産納税通知書で確認する)

それでは、被相続人が所有していた不動産を余すことなく調査するためには、どのようにすれば良いのでしょうか?

参考になるのは、毎年の4月から5月にかけて届く、固定資産納税通知書です。

固定資産納税通知書の課税明細書のページには、ある市町村において、被相続人が所有していた不動産の一覧が記載されています。

このため、固定資産納税通知書の課税明細書のページを確認すれば、被相続人が所有していた不動産を、ほぼ、余すことなく確認することができます。

固定資産納税通知書は、市町村ごとに送付されます。

このため、被相続人が複数の市町村で不動産を所有していた場合には、別々に固定資産納税通知書が送付されることとなります。

複数の固定資産納税通知書が届いている場合には、それぞれの課税明細書のページを確認する必要があります。

もっとも、固定資産納税通知書を紛失してしまっており、これを確認することができない場合もあり得るかと思います。

また、固定資産納税通知書には、固定資産税が非課税となっている不動産が記載されていないことがあります。

固定資産税が非課税になっていた不動産についても、相続税が課税されることがありますので、相続税申告にあたっては、固定資産税が非課税になっている不動産も調査する必要があります。

このように、固定資産納税通知書を紛失した場合、固定資産税が非課税になっている不動産を調査したい場合は、どのようにすれば良いのでしょうか?

3 不動産の調査方法(名寄帳で確認する)

固定資産納税通知書以外の調査方法としては、市町村役場において、名寄帳を取得することが考えられます。

名寄帳についても、被相続人が所有していた不動産の一覧が記載されています。

名寄帳は、市町村によっては、固定資産課税台帳と呼ばれることもあります。

名寄帳には、固定資産税が非課税になっている不動産も記載されています。

このため、固定資産納税通知書が残っている場合であっても、固定資産税が非課税になっている不動産も確認するため、念のため、名寄帳を確認することもしばしばあります。

4 登記簿を確認する

固定資産納税通知書の課税明細書や名寄帳を確認したあとは、それぞれの不動産について、登記簿を確認するのが望ましいでしょう。

理由は以下のとおりです。

固定資産納税通知書や名寄帳は、その年の1月1日時点の所有者が記載されています。

このため、1月1日時点で不動産の所有者であったとしても、その後、不動産の名義を変更しまっており、不動産の所有者ではなくなっている可能性を排除することができません。

現時点での所有者を確認するためにも、それぞれの不動産について、登記簿を確認するのが望ましいでしょう。

また、共有の不動産の場合ですと、固定資産納税通知書や名寄帳には、被相続人が何分の何の持分を有しているかが記載されていません。

被相続人の持分を確認するためには、不動産の登記簿を取得する必要があります。

相続させる遺言と遺贈する遺言2

1 不動産名義変更手続と税金の違い

相続させる遺言、包括遺贈する遺言、特定遺贈する遺言は、異なる種類の遺言であると解釈されています。

このため、不動産名義変更手続や課税される税金がまったく異なってくることがあります。

このあたりに取り扱いは、不動産名義変更手続の種類、税金の種類によって、違った定められ方をしていますので、正確に把握することは困難です。

しかも、不動産名義変更手続については、近年の法改正もあるため、古い情報を参照すると、思わぬ間違いが生じるおそれがあります。

 

ここでは、不動産の名義変更手続、課税される税金の違いについて、まとめておきたいと思います。

 

2 全体の整理

令和6年4月以降の全体的な取り扱いの違いを整理すると、以下のとおりです。

 

・ 登記を単独申請でできる、登録免許税が0・4%で済む

  相続させる遺言

  相続人に対する包括遺贈

  相続人に対する特定遺贈

 

・ 農地法3条の許可申請が不要、不動産取得税が課税されない

  相続させる遺言

  包括遺贈(相続人に対するものも、相続人以外の人に対するものも)

  相続人に対する特定遺贈

 

3 個別の説明

⑴ 登記を単独申請でできるか

令和4年時点では、登記を単独申請できるのは、相続させる遺言に限られています。

遺贈する遺言については、相続人全員の協力を得なければ、登記手続を行うことができません。ただし、遺言執行者が就任している場合は、相続人全員ではなく、遺言執行者の協力を得て登記手続を行うこととなります。

いずれにせよ、現時点では、遺贈する遺言の場合は、取得者が単独で登記申請を行うことはできず、相続人全員か遺言執行者と共同で登記申請を行う必要があります。

 

ところが、令和3年4月28日の不動産登記法改正により、令和6年4月1日以降、相続の登記が義務化されることとなりました。

上記のとおり、遺贈については、共同で登記申請を行う必要があり、手続が困難であるにもかかわらず、相続の登記が義務化され、登記が完了していないことを理由として罰則のみが科されることは不合理だと考えられました。

そこで、遺贈のうち、相続人に対するものに限り、取得者が単独での登記申請を行うことができることとなりました。

相続人に対する遺贈の登記が単独申請できるようになるのは、令和6年4月1日の改正法の施行後のことになります。

 

⑵ 登録免許税が0・4%で済むか

不動産の所有者が変更になる場合には、登記申請を行います。

登記申請を行う際には、登録免許税を納付する必要があります。

登録免許税の税率は、固定資産評価額の2%になることが多いですが、相続人に関する一定の登記では、0・4%になります。

相続させる遺言による登記、相続人に対する遺贈の登記が、登録免許税が0・4%になる場合に該当します。

 

不動産登記法の改正法の施行後は、結果として、登記を単独申請でできる場合=登録免許税が0・4%で済む場合になります。

 

⑶ 農地法3条の許可申請が不要か

農地の所有者が変更になる場合には、農地法3条により、農業委員会の許可が必要になります。

この農業委員会の許可が得られない限り、農地の所有者を変更することは基本的にはできませんが、相続に関する一定の名義変更については、農地法3条の許可が不要とされており、農業委員会の許可を得ることなく、所有者を変更することができます。

かつては、相続させる遺言による農地の取得、包括遺贈による農地の取得については、農地法3条の許可が不要とされていました。

 

ところが、平成24年に、大阪高裁が、包括遺贈と特定遺贈(特に相続人に対するもの)とで農地法3条の許可の要否を分ける合理的な理由がないとの判決を下したため、平成24年12月24日に農地法施行規則の改正がなされることとなり、同日以降、相続人に対する特定遺贈についても農地法3条の許可が不要とされることとなりました。

 

⑷ 不動産取得税が課税されないか

不動産を取得した場合には、地方税として不動産取得税が課税されます。

不動産取得税の税率は3~4%前後ですが、一定の軽減措置も設けられています。

この点、相続させる遺言による不動産の取得、包括遺贈による不動産の取得、相続人に対する特定遺贈による不動産の取得については、不動産取得税が非課税とされています。

 

このため、現在では、農地法3条の許可申請が不要な場合=不動産取得税が課税されない場合になっています。

 

弁護士として相談を受ける際にも、実際に手続を行うことが可能か、どのような税金がかかるかについては、把握しておく必要がある部分だと思います。

相続させる遺言と遺贈する遺言1

1 遺言の種類

遺言の文例を確認すると、「●●に相続させる」と記載しているものと、「●●に遺贈する」と記載しているものがあります。

こうしたわずかな書き方の違いがあるだけで、まったく異なる種類の遺言が作成されたと扱われることとなります。

このため、書き方が違うだけで、遺言による手続の進め方や、課税される税金も違ってくることがあります。

 

ここでは、遺言の種類について、概略を説明したいと思います。

 

2 相続させる遺言

相続させる遺言は、相続人が遺産分割する方法を指定するものです。

このため、相続人に対してのみ、相続させる遺言を残すことができます。

 

仮に、相続人以外の人に対して、形上、「●●に相続させる」との文言の遺言を作成したとしても、その遺言は後述の遺贈する遺言に読み替えられることとなります。

 

3 遺贈する遺言

遺贈する遺言は、特定の人に遺産を引き継ぐものとすることを記載したものとなります。

遺贈する遺言は、相続人に対しても、相続人以外の人に対しても、残すことができます。

 

4 包括遺贈と特定遺贈

遺贈する遺言には、包括遺贈と特定遺贈があります。

包括遺贈と特定遺贈のどちらかであるかによっても、異なる手続により名義変更がなされ、異なる税金が課税される可能性がありますので、ここで違いを説明しておきたいと思います。

 

包括遺贈は、「すべての財産を遺贈する」、「財産の2分の1を遺贈する」というように、個々の財産を特定せず、遺産全体をまとめて遺贈することを言います。

 

特定遺贈は、「●●市●●町●●番地の土地、建物を遺贈する」というように、個々の財産を特定して遺贈することを言います。

 

中には、包括遺贈か特定遺贈か、判断に迷うことがあります。

たとえば、「預貯金のすべてを遺贈する」、「預貯金の全額の2分の1を遺贈する」の場合はどうでしょうか?

この場合は、預貯金全体をまとめて遺贈していますが、遺産全体をまとめて遺贈しているわけではありません。

このため、特定遺贈に該当すると解釈されます。

 

「●●市●●町●●番地の土地、建物以外の財産を遺贈する」の場合はどうでしょうか?

この場合は、特定の不動産以外については、遺産全体をまとめて遺贈することとなりますので、包括遺贈に該当すると解釈されます。

 

こうした遺言の解釈は、専門家でも迷うところですので、相続に詳しい弁護士にご相談いただいた方が良いと思います。

連帯債務とは

1 連帯債務とは
連帯債務という言葉は、弁護士にとっては馴染みの深い言葉ですが、一般には、保証や連帯保証とどのように異なるかについて、正確には把握されていないことが多い言葉だと思います。

連帯債務は、複数の連帯債務者が、同一の債務について、全額を返済する責任を負うことをいいます。
たとえば、1500万円の借入を行い、3人の債務者が連帯債務者となっていたとします。
この場合、債権者は、それぞれの連帯債務者に対し、1500万円全額について、返済を求めることができます。

複数の人が共同で借入を行うにあたり、その複数の人が債務の全額について返済する責任を負うこととしておけば、債権者の側から見ると、安心して貸付を行うことができますし、連帯債務者の側から見ると、経済的信用を高めることができ、より多くの金額を借り入れることができることとなります。

また、複数の人が、共同で不動産等を購入するあたり、購入資金を借り入れる場合にも、共同での借入とするために、連帯債務が組まれることがあります。

連帯債務については、それぞれの債務者が、債務の全額について、返済する責任を負っています。
このため、ある債務者が返済を行わない場合には、他の債務者は、その分も合わせて返済を行う必要があります。
先の例で、1人の連帯債務者が500万円を返済していたとしても、その連帯債務者は、残額である1000万円全額について、返済する責任を負っていることとなります。

2 連帯保証債務との違い
連帯債務と似た言葉で連帯保証債務という言葉があります。

連帯保証債務の場合は、主債務者が存在しており、主債務者が返済を行わなかったときに、初めて、連帯保証人が返済を行わなければならなくなります。
また、連帯保証人が返済をした場合には、連帯保証人は、主債務者に対し、返済した金額の全額を求償することができます。

これに対し、連帯債務の場合は、それぞれの連帯債務者が、直接、債務を返済する責任を負っています。
このため、それぞれの連帯債務者は、他の連帯債務者との関係でも、自ら負担すべき部分(負担部分)をもっています。
したがって、1人の連帯債務者が返済を行った場合に、他の連帯債務者に対して求償することができるのは、自身の負担部分を超える部分に限られることとなります。

全血兄弟と半血兄弟1

被相続人に子がいなかった場合で、父母も存命ではない場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
この場合は、被相続人の兄弟姉妹の相続分を算定する必要が出てきます。

このとき、被相続人の全血兄弟については、相続分が均等になりますが、半血兄弟については、相続分が全血兄弟の半分になります。
このように、全血兄弟と半血兄弟とで、相続分が異なってきますので、被相続人の兄弟姉妹の相続分を算定するにあたっては、全血兄弟と半血兄弟の違いを正確に把握しておく必要があります。

全血兄弟は、被相続人と、父母のいずれもが同じである兄弟姉妹のことを言います。
他方、半血兄弟は、被相続人と、父母の片方だけが同じである兄弟姉妹のことを言います。

たとえば、次の場合を考えたいと思います。
・ 甲と乙の間に、実子として、被相続人とAとBが生まれた。
この場合、AもBも、被相続人と父母のいずれもが同じになりますので、AもBも全血兄弟になります。
このため、AとBの相続分は均等になり、1/2ずつになります。

それでは、次の場合はどうでしょうか。
・ 甲と乙の間に、実子として、被相続人とAが生まれた。
・ 甲と丙の間に、実子として、Bが生まれた。
Aは、被相続人と父母のいずれもが同じになり、全血兄弟になります。
Bは、被相続人と父母の片方だけが同じになりますので、半血兄弟になります。
このため、Bの相続分はAの相続分の半分になりますので、Aの相続分は2/3、Bの相続分は1/3になります。

このように、全血兄弟か半血兄弟かの判断は、通常は迷うことなく行うことができますが、中には、弁護士であっても、どちらに該当するかの判断に迷う例があります。
次回は、判断に迷う例について説明したいと思います。

高齢者消除

戸籍については、高齢者消除と呼ばれる制度があります。

戸籍には、実際には死亡していると思われるにもかかわらず、戦時の混乱や誰からも死亡届が提出されていないこと等の理由により、生存しているままになっている方がいます。
一時期には、国内最高齢を大幅に越える150歳の方が、戸籍上、生存しているのと記載がなされていました。

これらの、特に年齢が100歳以上であり、かつ、住所が分からず生存しているかどうかを確認できない方については、戸籍の記載をそのまま放置しておくのは妥当ではないと考えられています。
というのも、これらの方が実際には亡くなっているのでしたら、今後、誰からも死亡届が提出されないままとなり、戸籍上、いつまでも生存しているのと記載され続けることとなってしまうからです。

このため、100歳以上であり、生存しているかどうかが不明な方については、市町村長が、法務局長の許可を得て、戸籍から消除することができるものとされています。
これを高齢者消除と、言います。
高齢者消除がなされると、戸籍上、「高齢者につき死亡と認定」との記載がなされます。

それでは、死亡の事実を証明できない方がいる場合には、高齢者消除の制度を用いることにより、その方が死亡したものと取り扱うことはできないのでしょうか。
「高齢者につき死亡と認定」との記載からすると、その方を死亡したものと取り扱うことができるような感じがしますが、そうではありません。
高齢者消除は、あくまでも、戸籍の事務処理上、死亡したとの認定を行うに過ぎないものであり、法律上、死亡したものとみなされるわけではありません。
したがって、高齢者消除がなされたとしても、その方を当事者としなければ、遺産分割協議を行うことはできず、不動産や金融資産の手続もできないこととなります。
このため、高齢者消除がなされ、「高齢者につき死亡と認定」との記載がなされている方がいるとしても、失踪宣告等の手続を行わなければ、その方を死亡したものとみなすことはできないこととなります。

なお、高齢者消除とは別に、認定死亡という制度があります。
高齢者消除が戸籍上「高齢者につき死亡と認定」との(まぎらわしい)記載がなされるため、混同されがちですが、認定死亡と高齢者消除はまったく別の制度です。
認定死亡は、火災や水難事故の際、これらの事故に遭った方を、行政が死亡したとの認定を行うものです。
認定死亡の対象になった方は、法律上も死亡したとの推定がなされることとなっています。

このように、制度を正確に理解しなければ、誤った結論を導きかねないため、弁護士としては、細心の注意を払いたいところです。

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死亡の事実の証明2

次に、生死が不明であることを理由として、家庭裁判所で失踪宣告の手続を行うことが考えられます。
失踪宣告がなされると、死亡したものとみなされますので、その人を手続の当事者に含む必要はないこととなります。

もっとも、失踪宣告についても、一定の問題があります。
いわゆる普通失踪の場合は、7年間生死不明であることを証明する必要があります。この証明は、警察に捜索願いを出されており、その後7年以上所在等が確認できないことによりなされることが多いです。
しかし、長期間生死不明になっている人ですと、そもそも誰も捜索願い等を出していないことがほとんどです。このため、失踪宣告の手続を進めるには、ほとんどの場合、警察に捜索願いを出すところから始める必要があります。
さらに、失踪宣告の申立を行ってからも、手続が完了するまでに1年程度の期間が必要です。
つまり、ご相談を受けてから、遺産分割協議を開始することができるまて、8年程の期間が必要となります。

また、失踪宣告がなされると、7年の期間が満了した時点でその人が死亡したものとみなされますので、新たな相続が発生することとなります。
案件によっては、次の相続人に外国籍の人が含まれることがあり、かえって相続関係が錯綜してしまい、遺産分割協議が事実上不可能になることもあります。

このため、失踪宣告も、適当な解決策にならないことがあります。

3つ目の対処として、不在者財産管理人を選任することが考えられます。
所在不明の人については、不在者財産管理人を選任することができます。
不在者財産管理人選任申立は、その人の従来の住居所(最後の住居所だけではない)か、財産所在地(遺産の所在地を含む)を管轄する家庭裁判所で行います。これらが三重県内にあるのでしたら、津家庭裁判所の本庁か該当する支部が管轄を有することとなります。
不在者財産管理人については、遺産分割等の法律問題に対処しなければなりませんので、弁護士が選任されることが多いです。
不在者財産管理人を選任すると、不在者財産管理人を当事者として、有効な遺産分割協議を進めることが可能となります。
不在者財産管理人の選任自体は、おおむね2~3か月程の期間で行うことができます。
また、不在者財産管理人が当事者となりますので、新たな相続が発生することとなるわけではありません。

ただ、不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可のもとに遺産分割協議を行うこととなります。
このため、当方が遺産を取得することを希望するのでしたら、法定相続分額に相当する金額の代償金を支払を行う必要があります。

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死亡の事実の証明1

遺産分割の案件では、相続関係を調査し、相続人を特定する必要があります。
相続人全員の合意のある遺産分割協議書が作成できなければ、法務局は不動産の名義変更を受け付けてくれないですし、銀行や証券会社も金融資産の払戻や名義変更を行ってくれません。
したがって、遺産分割の案件では、前提として、相続人を特定することが必要不可欠です。

そして、相続関係の特定は、ほぼすべての案件で、市町村役場が発行する戸籍によって行われます。
戸籍に何らかの記載があれば、その記載を前提として手続を進めなければなりません。

ここで問題となるのが、生存を確認できない人物が、戸籍上、生存していることとなっている場合です。
中には、間違いなく死亡したはずであり、親族もそのことを共通して認識している人物が、戸籍上、生存していることとなっていることがあります。
三重県の案件でも、国内最高齢に近い人物が、戸籍上は、生存していることとなっていた例がありました。

これは、戸籍上の事務処理の誤り等によって起きる問題です。
三重県ですと、津市について、戦災により戸籍が焼失した時期があるため、このような事態が生じることがあります。

このような場合であっても、戸籍上は生存していることとなっているのですから、生存していることを前提として手続を進めなければ、不動産や金融資産の手続を進めることはできないこととなります。
とはいえ、本人の生存を確認することができない状態であるわけですから、その人と遺産分割協議を行うように言われても、不可能な話です。
このような場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか。

1つ目の対処として、戸籍自体の記載を死亡に改めることが考えられます。
しかし、死亡の記載を行うには、死亡届を行う必要があります。そして、死亡届を提出する際には、医師の死亡診断書か警察の死体検案書を提出する必要がありますが、いつどこで亡くなったかが分からない場合や、古くに亡くなった場合には、これらの書類を提出することは不可能です。
死亡届以外に、戸籍訂正許可申立を行うことも考えられますが、家庭裁判所の許可を得る必要があり、そのためには死亡の事実を証明しなければなりません。
現実には、そもそも証明する資料がなかったり、あっても親族の証言だけであったりして、死亡の事実を証明することが困難なことが多いです。

香典と弔慰金

相続で争いになっている事案で,香典や弔慰金の帰属が問題となることがあります。
三重県内でも,この点が争われることがしばしばありますので,一般的な考え方をまとめておきたいと思います。

香典は,葬儀において,故人のご霊前に供える金品のことを指します。
香典は,葬儀の参列者から喪主に対して渡されます。

香典は,相続財産には含まれないとされています。
香典が誰に帰属するかについては,様々な見解がありますが,有力な考え方は,香典は葬儀費用に充当されるが,葬儀費用を上回る場合には,上回った分は喪主に帰属するとしています。

弔慰金は,故人を弔うとともに,遺族を慰めるために交付される金銭のことを指します。
弔慰金は,会社や団体から支給されることがあります。
弔慰金規程に基づき,受給権があるとされている人が受け取ります。
弔慰金規程の定め方は会社や団体によって様々ですが,配偶者が第一の受給権を有し,配偶者がいない場合は子が受給すると定められていることが多いでしょう。

弔慰金もまた,相続財産には含まれないとされています。
弔慰金が誰に帰属するかについては,弔慰金規程によって決まることとなります。
ただし,弔慰金規程において,金額,趣旨,受給権者がどのように定められているかにより,弔慰金を受け取ったことが,特別受益に準じるものと扱われ,相続において考慮される可能性があります。
たとえば,弔慰金の額が相続財産と比較して多額であり,実質が退職金に類するものとされており,受給権者が民法上の相続人と同じように定められている場合には,弔慰金を受け取ったことが,特別受益に準じるものと扱われる可能性があります。

このように,弔慰金については,弔慰金規程の定め方次第という部分がありますので,高額の弔慰金が発生している場合には,弔慰金規程の内容を確認する等する必要があることがあります。

相続人不存在の場合の税金について

相続人が不存在の場合には,相続人等の申立に基づき,家庭裁判所により,相続財産管理人が選任されます。
専門家としては,弁護士が相続財産管理人に選任されることが多いです。
相続財産管理人は,相続財産を管理,処分等し,債権者への弁済や国庫への帰属等の手続を行うこととなります。

相続財産の中に賃料が発生する不動産がある場合には,相続財産管理人は,賃料を受け取ることができます。

こうした事例で悩ましいのは,不動産から生じた賃料について,税金の申告をどのように行うかということです。

私が調べた限りでは,被相続人が亡くなるまでに生じた賃料については,準確定申告の対象になり,所得税の申告・納付をしなければならないこととなります。そして,所得税の納付義務は,相続財産法人に引き継がれますので,相続財産管理人が準確定申告の手続を行うこととなります。

問題は,被相続人が亡くなって以降に生じた賃料について,どのように申告を行うべきかです。
相続財産法人については,普通法人の一種になりますので,法人税の申告の対象になるとの考え方があるようですが,これと異なる考え方もあるようです。
また,法人税の申告を行うこととなった場合,事業年度をいつからとするかも確定する必要があります。
この点については,追って検討を行う必要がありそうです。

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