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法曹三者新年会

法曹三者新年会に参加してきました。

毎年,1月中旬頃の恒例行事として,法曹三者の新年会が開催されます。
法曹三者とは,弁護士会,検察庁,裁判所の3団体のことを言います。
他にも,それぞれに配属されている修習生も,何名かが参加していました。

三重弁護士会の会員数が増加しつつあるため,普段,顔を合わせることのない先生とお会いできる機会としては,懇親会と総会くらいしかありません。
三重弁護士会も,徐々に,お互いの顔が見えない状況になりつつあるとも言われていますので,このような機会は,大切にしていきたいものです。

投資用マンションの勧誘

弁護士に対して,投資用マンションの購入の勧誘が行われることが,しばしばあるようです。
弁護士会の名簿等で弁護士の連絡先を確認し,各弁護士に営業電話を行うというパターンが多いようです。
私自身も,勧誘の電話をいただいたことがあります。

話を聞く限りでは,投資用マンションとは,ローンを組んでマンションを購入し,購入したマンションを第三者に賃貸するものであるようです。
第三者から賃料を受け取り,賃料の一部をローンの返済や経費の支払に充て,余った分が不労所得となるという仕組みであるようです。

確かに,十分な賃料を受け取ることができるのであれば,その分収入が増えますので,利益が生じることとなるでしょう。
ただ,10年単位で見れば,マンションは徐々に老朽化し,賃料額が減少する可能性があります。
そもそも,購入したマンションを賃借してくれる人がいるかという問題もあるように思います。
賃料収入が減少したり,なくなったりすると,結局,ローンの返済だけが残ってしまい,損失だけが生じることになりそうです。

このような話をすると,生じた損失は,本業(弁護士業)の収入から引き算できるという答えが返ってくるようです。

確かに,不動産所得は,損益通算の対象になりますので,経費を差し引いて生じたマイナスは,給与所得や事業所得から差し引くことができます。
ただ,不動産所得から引き算できる経費は,正確には,ローンのうち,利息相当分だけです。
たとえば,毎月10万円のローンを返済し,そのうちの3万円が利息である場合,毎月10万円が消えていくのに対し,経費として扱われ,引いては,損益通算により,給与所得や事業所得から引き算することができるのは,利息分の3万円だけに過ぎません。
また,損益通算により所得税が減ったとしても,それ以上の額がローンの支払で消えていくことになりますので,入居者がいなくなった場合,トータルではマイナスになることは確かです。

このように考えると,入居者が入る可能性,賃料の変動の予想等を踏まえ,賃料収入の期待値を算定し,投資を行うかどうかを決める必要があることとなりそうですが,私にとっては専門外の部分ですので,検討しないこととしました。

預貯金の遺産分割についての最高裁の決定5

今回の最高裁の決定について,もう1つ気になっている問題があります。
実際上の問題ですが,多額の相続税を納付しなければならない場合に,どのように納付資金を賄うかという問題です。

相続税の申告と納付の期限は,相続の開始を知ってから10か月です。
10か月の期限内に,相続税の計算を行い,納付資金を賄い,納付の手続をとる必要があることとなります。
仮に10か月の期限内に納付することができなければ,延滞税が発生するとともに,財産に対する差押えが行われる可能性が出てきます。
相続税の発生が予想されるものの,相続税の納付資金を賄うことができない場合は,とりあえず,無申告加算税の発生を避けるため,申告だけしてしまい,やむなく納付は行わないといった対応をとることもあると思います。
このような場合,10か月の期間内に相続税の納付がなされなければ,期間が経過して1から2か月程のうちに,税務署から相続人に対し,いつ相続税を納付することができるかという照会が行われることが多いようです。場合によっては,差押えの手続に着手する旨の通告がなされることもあるようです。

当然,相続人の側としては,延滞税が発生することを避けたいですし,差押えがされかねない状況に陥ることも回避したいと考えます。
とはいえ,遺産分割が完了しない間は,多額の相続財産があったとしても,払戻し等の手続を行うことができないわけですから,自己資金から,相続税の納付資金を賄わなければなりません。
問題は,相続税の納付資金を自己資金で賄うことができない場合に,どうするかということです。

最高裁の決定が出される前は,預貯金が法定相続分に基づき当然に分割取得されることとなっていましたので,金融機関に払戻しを請求することにより,納付資金を賄うことが期待できました(今回の最高裁について口頭弁論が開かれることが報道されて以降も,普通預金については,払戻しに応じてくれる金融機関もありました)。
ところが,今回の最高裁の決定が出された結果,預貯金も遺産分割が完了しなければ,誰が取得するかが決まらず,払戻しを行うことができないこととなりましたので,今後は預貯金をあてにすることができなくなることとなります。

この点について,今回の決定の補足意見は,家事事件手続法上,仮分割の仮処分の制度が設けられているとのコメントを行っています。
確かに,仮分割がスムーズに行われ,一部だけでも相続財産の払戻しができるのであれば,納付資金を賄うことができるようになるでしょう。

ただ,この仮分割の仮処分ですが,私は,三重では,使われているのを目にしたことがありません。
試しに検索エンジンで検索してみましたが,ほとんどヒットしませんので(平成28年12月24日現在),三重だけではなく,全国的に使われていないようです。
また,仮差押のように,担保金の供託が求められるのか,賃金の仮払仮処分のように,通常は担保金の供託を求められないと考えて良いのかも,不明です。
そもそも,相続税の納付の必要があれば,仮分割仮処分を行う要件を満たしていると言えるのかも明らかではありません。

このように,不明確な部分が多い制度であるため,今後,相続税の納付が予想され,自己資金で相続税の納付を行うことができない案件を担当する場合には,不確定要素が多いと説明しつつ,仮分割仮処分の利用を試みる必要があるかもしれません(弁護士側の回答として,税務署との間で,遺産を差し押さえてもらう方向で協議してくださいとだけ回答するのも,いかがなものかと思いますので)。

預貯金の遺産分割についての最高裁の決定4

平成28年12月19日の最高裁の決定は,我々弁護士の仕事に大きな影響を与えるものでした。
ただ,個人的には,最高裁の決定だけで,すべてがきれいに解決されることとなったわけではなく,最高裁の決定により,新たな問題も生じているようにも思います。

私自身が気になっているのは,被相続人の生前に,相続人の一部が,正当な理由なく,預貯金を出金した場合がどうなるかということです。
正当な理由なく被相続人の預貯金を出金した場合は,被相続人は,出金した相続人に対し,不当利得返還請求権を有することとなります(三重でも,生前出金が問題となる事案は多いように思います)。
そして,被相続人の,出金した相続人に対する不当利得返還請求権は,可分債権に当たるものであり,他の相続人が,法定相続分に基づき,当然に分割取得するものとされます。

今回の最高裁の決定は,預貯金という財産の性格,預貯金を有している者の法的地位に着目し,預貯金が遺産分割の対象になるとの結論を導いているように読めますので,預貯金以外の可分債権には,適用されないこととなりそうです。
ですから,不当利得返還請求権については,今回の最高裁の決定の影響を受けず,これまで通り,法定相続分で当然分割されることとなりそうです。

ただ,そうは言っても,出金されることなく預貯金のまま残っていれば,遺産分割の対象になり,特別受益を考慮した分け方ができるのに対し,一部の相続人が出金した途端,法定相続分で当然分割となり,特別受益が考慮されなくなるというのは,釈然としないものがあります。
多額の生前贈与を受けた相続人が,正当な理由なく預貯金を出金した場合を考えると,このような結論が不合理であることが際立つと思います。

その一方で,出金された預貯金の不当利得返還請求について,一律に特別受益が考慮されるものとすると,様々な難題が出てくるようにも思います。
たとえば,遺産分割調停・審判(家庭裁判所)と不当利得返還請求訴訟(地方裁判所)が同時並行で行われている場合に,家庭裁判所と地方裁判所の両方で同じ特別受益の主張がなされたとき,2つの手続のどちらで特別受益を考慮するかといった問題が生じるように思います。
また,寄与分については,家庭裁判所でしか判断できないとされていますので,地方裁判所で審理される不当利得返還請求訴訟では,手続的に考慮することが不可能であるといった問題もあるように思います。

現状,この部分について検討しても,明確な結論は出てこないと思いますので,私自身は,今後の判例の動向等を見ていきたいと思っています。

預貯金の遺産分割についての最高裁の決定3

遺産分割の対象になる場合と当然分割の場合との第二の大きな違いは,今回の最高裁の事案でも問題になった,特別受益が考慮されるかどうかという点です(寄与分が考慮されるかどうかも問題になり得るでしょう)。

特別受益は,生前に多額の贈与を受けた相続人は,その分,遺産分割の際に取得できる権利割合が減少するというルールです。
今回,最高裁で問題となった事案も,相続人の一部が多額の生前贈与を受けており,特別受益を有していた事案でした。
特別受益は,基本的には,遺産分割の手続において考慮されるものです。
ですから,原則の,「相続人全員で遺産分割をしなければ帰属が決まらない」財産の場合では,遺産分割手続を進める中で,特別受益が考慮され,生前贈与を受けた相続人の権利割合が減少することとなり,取得できる財産も少なくなることとなります。

他方,例外の,「法定相続分に基づき当然に分割取得」の場合は,法定相続分で分け方が決まるわけですから,特別受益が考慮されることはないこととなるのです。寄与分につきましては,家裁でしか判断できないとされていますので,なおのこと,考慮される余地がありません。

そして,預貯金につきましては,これまでは,基本的に,例外の,「法定相続分に基づき当然分割」とされてきたわけですから,厳密には,特別受益を考慮されない財産だったのです。

以上から,多額の生前贈与を受けた相続人がいたとしても,その相続人は,預貯金については,法定相続分相当額を取得することができるという結論が導かれることとなります。
特別受益の存在は,不動産・有価証券(株式・投資信託・国債・社債等)等,遺産分割の対象となる財産を分割する際に考慮されることとなります。
仮に,不動産・有価証券(株式・投資信託・国債・社債等)等,遺産分割の対象になる財産がほとんどない場合で,遺産のほとんどを預貯金が占める場合は,特別受益が考慮される余地がないこととなってしまいます(遺留分侵害の状態にまで至っていれば,遺留分減殺請求が認められますが,請求できる金額はかなり少なくなってしまいます)。

とはいえ,このような結論は,生前贈与を受けていない相続人から見れば,不公平です。
遺産が株式のままである場合は,特別受益が考慮されるが,偶然,株式を売却し,預貯金に代わっていた場合は,特別受益が考慮されなくなることを考えれば,上記の結論の不公平さが際立つと思います。

このような不公平な結論を避けるために,これまでは,相続人全員が合意する場合には,預貯金も遺産分割調停・審判の対象にするといった処理が行われてきましたが,相続人の一部が反対する場合には,やはり,預貯金は当然分割されるものとされてきました。

今回の最高裁の決定は,相続人の合意の有無に関係なく,また,預貯金の科目の種別に関係なく,預貯金が遺産分割の対象になるとしています。
今回の最高裁の決定により,預貯金についても特別受益が考慮されることとなり,上記の不公平な結論が避けられることとなったのです。

預貯金の遺産分割についての最高裁の決定2

このように,原則の,「相続人全員で遺産分割をしなければ帰属が決まらない」と,例外の,「法定相続分に基づき当然に分割取得」の間には,大きな違いがあります。

第一の大きな違いは,相続財産の払戻し等を行うまでに要する時間の違いです。

我々弁護士が担当する案件は,相続人全員で遺産分割についての合意を行うことが困難である場合が多いです。
事案によっては,調停・審判等の手続に移行し,最終的に相続人全員で分け方を決めるまで,長い時間が必要になることもあります。

このため,原則の,「相続人全員で遺産分割をしなければ帰属が決まらない」財産の場合だと,決着がつくまで,その財産を動かすことができないこととなります。何月何日までに相続税を納付しなければならない場合や,何月何日までに亡くなった方の負っていた債務(アパートローン,事業上の負債等)を弁済しなければならない場合であったとしても,相続人全員で分け方を決めるまでは,財産を動かすことができないのです(緊急やむを得ない場合は,法律上,仮分割の仮処分を行うこともできるようですが,後日,言及したいと思います)。

他方,例外の,「法定相続分に基づき当然に分割取得」の場合は,各相続人に,法定相続分に基づく払戻しが認められることとなります。相続人全員で分け方を決めなくても,当然に法定相続分で分かれてしまうわけですから,各相続人からの法定相続分の払戻しが認められることとなるのです。

そして,これまでは,預貯金は,基本的に,当然分割される例外に属するものとされており,相続人各人が,金融機関に対し,法定相続分相当額の払戻しを請求することができるとされてきました(実際には,訴訟等をしなければ,払戻しに応じない金融機関もありますが,紛争状態にある相続人全員で分け方を決めるのに要する時間に比べれば,金融機関に対して訴訟をするのに要する時間の方が,圧倒的に短いことが多いです)。
たとえば,相続税の納付の必要がある場合に,預貯金について,法定相続分相当額を払い戻し,相続税の納付に充てることができたのです(私自身,三重でも,このような目的での払戻しを行ったことが,何度かあります)。

預貯金の遺産分割についての最高裁の決定1

平成28年12月19日の最高裁の決定により,預貯金が遺産分割の対象になることが明確にされました。
弁護士として活動する中で,これまで当然の前提としてきた判例が変更され,これまで認められてきた事件の進め方を,今後は変えなければならなくなるといったことが,しばしばあります。
今回の決定も,事件の進め方に対する影響という点では,重要性が大きいものであると言えます。

遺産につきましては,基本的には,相続人全員で分け方を決めなければ,相続人のうちの誰がどの財産を取得するかが決まりません。
たとえば,相続人が子2名の場合で,株式が100株存在する場合,株式100株は,相続人全員で分け方を決めるまでは,相続人全員の準共有と扱われます。自動的に,50株ずつ取得するといったことはありません。
以上の原則から,不動産,有価証券(株式・投資信託・国債・社債等),自動車,家財,現金に至るまで,相続人全員で遺産分割を行わなければ,誰が取得するかが決まらないということになるのです。

ただ,このような原則には,重要な例外が存在するとされてきました。
それは,いわゆる可分債権については,相続の開始により,相続人が,法定相続分に基づき,当然に分割取得するというものです。
可分債権を定義すると複雑になりますので,結論として,亡くなった方が持っていた損害賠償等の請求権は,法定相続分により当然に分割されるということを押さえておきたいと思います。
たとえば,亡くなった方が,交通事故に遭われており,加害者に対して500万円の損害賠償請求権をもっていた場合は,子2名が相続人なら,子1人1人が,別々に,250万円の損害賠償請求を行うことができるということになります。
そして,預貯金についても,これまでは,基本的に,金融機関に払戻しを求めることができる権利であり,可分債権に含まれ,当然に分割されるとされてきました。

秘密証書遺言3

公証人の関与のもと,遺言を作成する場合は,公証役場に手数料を支払う必要があります。
手数料は,遺産の総額とは関係なく,一律1万1000円です。
これに加え,公証人が出張した場合には,日当や旅費を支払う必要もあります。たとえば,遺言者が公証役場に赴くことが困難であり,公証人の側が遺言者のいる場所(自宅,病院,施設等)まで出向く場合に,日当や旅費が発生することとなります。
他方,公正証書遺言の場合は,遺産総額により手数料が変動することとなっており,金額もおおむね秘密証書遺言よりも高額になります。

秘密証書の場合,遺言書の保管は,遺言者に委ねられます。
公証役場では,遺言を作成したこと自体は記録されますが,遺言書の原本を保管してもらうことはできません。
したがって,遺言者の側で,相続開始時まで遺言を確実に保管し,相続開始後に遺言を確実に発見してもらう手立てを講じておく必要があります。
遺言書自体が破棄されるおそれがある場合は,相続開始後に遺言内容を実現することができなくなってしまいますので,保管のため,何らかの手立てを講じておく必要があると言えるでしょう。

秘密証書遺言については,遺言内容を遺言者側で決めなければならない等,公正証書遺言と比較して,遺言者の側がリスクを負う場面が何か所かあります。
これらのリスクについては,専門家が遺言書の内容をチェックする等,遺言書作成に弁護士等の専門家が関与することにより,減らすことができるでしょう。

秘密証書遺言2

秘密証書遺言を作成するときの流れは,次のようになります。

最初に,遺言者が遺言書を作成し,これに署名,押印します。
この段階では,公証人や証人は登場しません。遺言書を作成するところまでは,遺言者の側に委ねられることとなるのです。
ところで,秘密証書遺言については,遺言者が署名押印する必要はあるものの,遺言者が遺言書を自書する必要はありません。つまり,遺言書を他人が代筆しても構いませんし,パソコン等で打って作成しても構わないこととなります。
自筆証書遺言の場合は,遺言者が自筆で遺言書を書く必要がありますので,この点が大きな違いになります。

次に,遺言者が,遺言書を封じ,証書に用いた印章で封印します。

そして,遺言者が,公証人1人と証人2人の面前で,遺言書を入れた封書を提出し,封書の中に入っているのが自己の遺言である旨と,筆者の氏名・住所を申述することとなります。
このように,遺言書を封印した段階で,公証人と証人が登場することとなっているのです。
公正証書遺言の場合は,未成年者や受遺者,推定相続人等は証人になれないこととなっていますが,秘密証書遺言についても,同様に,証人になることができません。
反面,上記以外の人は,立会確認が可能であれば,証人になることができます(弁護士等の資格が必要といった制約はありません)。
遺言執行者に指定された人についても,証人になることができます。

最後に,公証人が,証書を提出した日付と遺言者の申述を封紙に記載し,遺言者,証人とともに署名押印します。

このように,秘密証書遺言の場合は,公証人が登場する前に,遺言者の側で遺言書の内容を書いてしまうことになりますので,公証人に遺言内容をチェックしてもらえないこととなります。
したがって,遺言書の作成に当たっては,遺言者の側で,要式や文面について慎重にチェックをする必要があります。

秘密証書遺言1

弁護士業務の中で,最近,秘密証書遺言について調査することがありました。
遺言には,自筆証書遺言と公正証書遺言,秘密証書遺言等の方式があり,いずれかの方式に従わなければ,有効な遺言を作成することができません。
大部分の遺言は,自筆証書遺言か公正証書遺言で作成されており,秘密証書遺言が登場することは,ほとんどありません。
そこで,後日,秘密証書遺言についての相談を受ける場合に備え(ないかもしれませんが),秘密証書遺言に関することをまとめておきたいと思います。

秘密証書遺言を作成する場面については,次のように説明されます。
遺言者が,相続開始まで,遺言の内容を秘密にしておきたいと思うことがあります。
公正証書遺言を作成する場合は,証人2人の面前で,遺言者が遺言内容を口授し,公証人が遺言者に遺言内容の読み聞かせを行うという流れで,作成されることとなります。
このように,公正証書遺言の場合,証人が立ち会うことになりますので,証人を介して,関係者に遺言の内容が伝わる恐れがあります。
そこで,遺言者が遺言書に封を施し,遺言内容を秘密にしておき,公証人と証人には遺言書が封入されていることだけを確認してもらうこととしたものが,秘密証書遺言です。

もっとも,公正証書遺言の場合も,証人を準備できない場合,公証役場に証人を準備してほしいとの申出を行い,公証役場の側で,司法書士・行政書士等に対し,証人となることを依頼するというシステムを利用することができることがあります(ただし,証人に対しては,5000円~1万円の費用を支払う必要があります)。
通常,司法書士・行政書士等は,無関係の第三者でしょうから,このような形をとれば,公正証書遺言の中身を,事実上,秘密にしておくことができることとなります。
ですから,個人的には,秘密にしておきたいという理由で,あえて秘密証書遺言を作成する必要は,薄れてきているように感じます。