投資信託の評価方法(上場投資信託ではない投資信託の場合)

遺産分割や相続税申告の場面では、投資信託の評価額を算定すべき場合があります。

弁護士として活動する場合も、税理士として活動する場合も、投資信託の評価を行うべき場面は、しばしばあります。

前提として、投資信託にはどのような種類があるのでしょうか?

投資信託は、大別すると、上場投資信託と上場投資信託ではない投資信託に分かれます。

上場投資信託は、上場している株式と同様、取引日にはリアルタイムで値動きし、売買が行われます。

これに対し、上場投資信託ではない投資信託は、リアルタイムで値動きすることはなく、取引日の決まった時間に基準価額が明らかにされるだけとなっています。

上場投資信託ではない投資信託の売買は、この基準価額に基づいて行われます。

大多数の投資信託は、上場されていませんので、後者に該当します。

上場投資信託ではない投資信託の評価方法は,以下の計算式によって評価されます。

被相続人が亡くなった日の基準価額-亡くなられた日に解約した場合の源泉所得税等-信託財産留保額、解約手数料

上記の計算を行うためには、まずは、投資信託の基準価額を調べる必要があります。

たとえば、投信総合検索ライブラリーのホームページ(https://toushin-lib.fwg.ne.jp/FdsWeb/FDST000000)で該当する銘柄を検索すると、基準価額を調べることができます。

このホームページの、「基準価額及び純資産総額の推移」の表により、被相続人が亡くなった日の基準価額を確認することができます。

基準価額は、1万口当たりの金額が記載されています。

たとえば、投資信託の口数が323万6589口であり、基準価額が1万0392円になっていた場合は、1万0392円×323万6589口/1万口=336万3463円であるとの計算を行うこととなります。

なお、被相続人が亡くなった日が土日祝日の場合は、被相続人が亡くなった日よりも前の、最も近い取引日の基準価額を用います。

後の日の基準価額ではなく、必ず、被相続人が亡くなった日よりも前の基準価額を用います。

次に、被相続人が亡くなられた日に解約した場合の源泉所得税等を計算します。

源泉所得税等は、被相続人が亡くなった日の基準価額と、取得価額との差額に、20.315%を乗じることで計算できます(厳密には、15.315%(所得税率)を乗じて切り捨てした額と、5%(住民税率)を乗じて切り捨てした額の合計を計算します)。

取得価額については、証券会社が発行する取引報告書に記載されていることもありますが、証券会社に確認する必要があることも多いです。

最後に、信託財産留保額、解約手数料を計算します。

たとえば、先述の投信総合検索ライブラリーのホームページの、「目論見書」に、信託財産留保額、解約手数料の計算方法が記載されています。

以上の計算結果に基づき、基準価額から、源泉所得税等と信託財産留保額、解約手数料を差し引くことにより、上場投資信託ではない投資信託の評価額を算定することができます。