給与所得者が亡くなられたときに支給される金銭と相続税

1 相続税の課税対象になるかどうかについて、個別の検討が必要
給与所得者が亡くなったときには、会社や雇用主から様々な金銭が支給されます。
例としては、未支給の給与、死亡退職金、弔慰金、花輪代、葬祭料等があります。
未支給の給与は、生前の勤務期間について支払われるはずだった給与です。
死亡退職金は、本来、退職の際に支払われるはずだった退職金を、死亡を理由として支払うものになります。
弔慰金は、遺族を慰謝するために支払われる金銭であり、花輪代、葬祭料は、葬儀費用等を填補するために支払われる金銭です。

このように、それぞれの金銭が支払われる目的は異なっており、支給がなされるかどうかもそれぞれで判断されます。
死亡退職金、弔慰金、花輪代、葬祭料等は、会社や雇用主が定める規程に従って支給されます。

これらの金銭については、相続税の課税対象になるものもあれば、課税対象にならないものもあり、個別の検討が必要になってきます。

2 未支給の給与
未支給の給与は、本来、亡くなった人が受け取るべきだったものになりますので、相続財産になります。
このため、通常の相続財産と同様、相続税の課税対象になります。

3 死亡退職金
死亡退職金は、亡くなった人に対して支払われるものを代わりに相続人が支払を受けるものではなく、遺族個人に対して支払われるものです。
このため、本来の相続財産ではありません。
しかし、相続の発生により支払われる金銭ではありますので、みなし相続財産として,相続税の課税対象とされています。

死亡退職金については、会社や雇用主から支給されることが多いですが、信託銀行から入金されることもあります。
これは、死亡退職金について、信託銀行に運用委託していることがあるためです。

死亡退職金については,非課税限度額が存在しており、非課税限度額を超える部分に限り、相続税が課税されます。
非課税限度額は、以下のとおりです。

500万円×法定相続人数

法定相続人数については、基礎控除額と同じ考え方を用いることとなっています。
したがって、相続放棄をした相続人がいたとしても、相続放棄がなかったものとして、法定相続人数を計算します。
また、養子がいる場合には、算入できる養子の人数は、他に実子がいないときは2名まで、他に実子がいるときは1名までに限定されます。

4 弔慰金、花輪代、葬祭料
弔慰金、花輪代、葬祭料については、一定の金額を超える場合には、死亡退職金とみなされ、死亡退職金に合算して、みなし相続財産として課税されることとなります。

弔慰金、花輪代、葬祭料が死亡退職金とみなされるのは、以下の金額を超える部分です。

・ 業務上の死亡の場合→3年分の普通給与
・ 業務上の死亡でない場合→半年分の普通給与

上記の金額を超え、死亡退職金とみなされた場合には、さらに、先に説明した500万円×法定相続人数を超える金額に限って,相続税が課税されます。

5 共済組合から支払われる弔慰金、埋葬料
亡くなられた方が国家公務員、地方公務員、学校の先生であった場合、共済組合から、弔慰金、埋葬料といった金銭が支給されることがあります。
具体的には,以下のとおりです。
・ 国家公務員共済組合法に規定する弔慰金、埋葬料
・ 地方公務員等共済組合法に規定する弔慰金、埋葬料
・ 私立学校教職員共済法に規定する弔慰金、埋葬料

共済組合から支給される弔慰金、埋葬料については、相続税は課税されません。

詳しくは相続に詳しい弁護士・税理士にお尋ねください。