1 はじめに
遺留分制度については、2018年7月以降、改正法が施行され、制度が大きく変更されることとなりました。
改正後は、遺留分は、専ら、金銭での請求を行うことができることとされました。
改正前は、遺留分の請求を行うと、第一次的には、相続財産を共有している状況となり、遺留分を請求された側が金銭での価額弁償を希望する場合には、金銭の支払により解決することができると定められていましたが、改正後は、法的には、金銭での請求のみができることとされました。
これに伴い、請求権の呼び名も、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に変更されることとなりました。
こうした改正に伴い、遺留分について、何点か、改正前と比較して、取り扱いの変更が生じた部分があります。
改正法が施行されてから時間が経ちましたが、弁護士としては、改正された部分そのものだけでなく、改正に伴って生じる派生的な影響についても注意したいところです。
ここでは、変更が生じたと思われる点について、まとめたいと思います。
2 賃料の取り扱い
相続財産である不動産の中に、賃料が発生する不動産が含まれていることがあります。
改正前は、遺留分減殺請求権を行使することにより、遺産である不動産については、遺留分権利者が相続開始時点より持分を有していたこととなっていました。
ただし、賃料については、遺留分権利者が分配を請求することができるのは、遺留分減殺請求があった日以後の果実に限定されていました(旧民法1036条)。
このため、遺留分減殺請求がなされて以降に発生した賃料については、分配を請求することができた。
ところが、改正後は、遺留分権利者は、遺産である不動産については、何らの権利も有しておらず、遺留分相当額の金銭の支払を請求することができるのみとなりました。
このため、遺留分権利者は、遺産である不動産から発生する賃料については、分配を請求することができないこととなりました。