1 障害者控除とは
相続人や受遺者(遺言により遺贈を受けた人)が障害者である場合には、その相続人や受遺者に課税される相続税が一定額軽減されます。
障害者が生命保険金の受取人に指定されている場合も、生命保険金のうち非課税限度額を超える部分について課税される相続税は一定額軽減されます。
このような制度を障害者控除といいます。
2 障害者控除の要件
障害者控除を用いることができるのは、次の要件を満たす場合です。
① 相続や遺贈により財産を取得した時点で特別障害者または一般障害者であること
② 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること
①から、相続や遺贈の時点、つまり、被相続人が亡くなった時点で特別障害者または一般障害者であることが要件になります。
特別障害者または一般障害者にあたるかどうかは、次の基準で判断されることとなります。
・ 精神障害者保健福祉手帳
1級→特別障害者
2級、3級→一般障害者
・ 身体障害者手帳
1級、2級→特別障害者
3級、4級、5級、6級→一般障害者
・ 療育手帳
重度の知的障害者→特別障害者
上記以外の知的障害者→一般障害者
・ 寝たきりの状態にある者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者
・ 障害のある65歳以上の者のうち、市町村長等の認定を受けた者
認定に応じて、特別障害者または一般障害者
・ 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(成年被後見人を含む)
特別障害者
②から、障害者が法定相続人である場合に限り、障害者控除を用いることができることとなります。
なお、相続放棄が行われた場合であっても、相続放棄がなかったものとして、法定相続人に当たるかどうかが判断されることとなります。
このため、法定相続人である障害者が相続放棄を行ったとしても、障害者控除を用いることができることとなります。
3 障害者控除の額
障害者控除により、相続税が以下の金額で減額されることとなります。
障害者控除は、いわゆる税額控除に該当し、控除額がそのまま相続税が差し引かれることとなりますので、大きく相続税が減額される可能性があります。
・ 特別障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×20万円
・ 一般障害者の場合
(85歳-相続や遺贈の時点の年齢)×10万円
※ 相続や遺贈の時点の年齢については、1年未満の端数は切り捨てとなります。
たとえば、被相続人が亡くなった時点で35歳10か月であった場合、相続の時点の年齢は切り捨てにより35歳になりますので、以下のとおりとなります。
・ 特別障害者の場合
(85歳-35歳)×20万円=1000万円
・ 一般障害者の場合
(85歳-35歳)×10万円=500万円
このように、障害者控除は、大きな税額軽減の効果がありますが、見逃されがちな制度でもあります。
三重県の案件でも、当法人が関与する前の段階では、障害者控除を見逃して申告がなされていることが時々あります。
このような場合には、当法人において、更正の請求を行い、相続税の還付のお手伝いをさせていただくこともあります。
4 障害者控除額が障害者に課税される相続税額よりも大きく、余りが生じる場合
上記により計算された障害者控除額が、障害者に課税される相続税額よりも大きく、控除額の余りが生じることがあります。
このような控除額の余りは、さらに、障害者の扶養義務者に課税される相続税から控除することができます。
扶養義務者は、以下のとおりです。
・ 配偶者
・ 直系血族
・ 兄弟姉妹
・ 3親等内の親族のうち、家庭裁判所が扶養義務を負わせた者
たとえば、障害者に課税される相続税額が200万円であり、障害者控除額が500万円でしたら、300万円の控除額の余りが生じることとなります。
この300万円の控除額の余りは、さらに、配偶者、直系血族、兄弟姉妹等に課税される相続税から控除することができます。