1 上場株式の相続税評価の方法
上場株式については、以下の4つの金額のうち、最も低い金額が評価額となり、相続税が課税されることとなります。
・ 被相続人が亡くなった日の終値 ・ 被相続人が亡くなった月の終値の平均 ・ 被相続人が亡くなった前月の終値の平均 ・ 被相続人が亡くなった前々月の終値の平均 |
このように、相続税の申告書に記載された株式の評価額は、相続時点の株価とも異なるものです。
相続の案件では、弁護士が相続税の申告書を精査すべきことがしばしばありますが、記載された評価額がいわゆる時価と異なることがあることについては、注意する必要があります。
2 権利落ちがある場合の例外
以上の原則に対して、権利落ちがあった場合には、権利落ちよりも前の取引日の終値をもって、被相続人が亡くなった日の終値とします。
そもそも、権利落ちとは何なのでしょうか?
株式を保有していると、新株の割当や配当等、一定の利益を得られることがあります。
このような新株の割当や配当は、権利確定日に株式を保有している人に対してなされます。
配当に関しては、多くの場合、3月、6月、9月、12月の最後の平日に株式を保有している人に対してなされます(一般には、3月、9月の最後の平日を基準として配当を行う会社が多いでしょう)。
しかし、実際には、権利確定日の当日に株式を取得したとしても、新株の割当や配当を受けることはできません。
株式を取得してから株主名簿に株主として名前が記載されるまで、現在でも、2営業日の日数を要するからです。
このため、新株の割当や配当を受けるには、権利確定日の2営業日前(これを権利付最終日といいます)までに株式を取得する必要があります。
そうすると、権利確定日の1営業日前に株式を取得した場合と、権利確定日の当日に株式を取得した場合には、権利確定日までに株式を取得したにもかかわらず、株主名簿に株主として記載されていないという手続上の理由から、新株の割当や配当を受けることができないこととなります。
このような事情から、理論上は、権利確定日の1営業日前(これを権利落ち日といいます)と権利確定日の当日には、株価が本来よりも低い金額で値動きするといわれています。
このように、株主名簿に株主として記載されていないという手続上の理由により、新株の割当や配当を受ける権利が消滅することを権利落ちといいます。
このような事情から、被相続人が亡くなったのが権利確定日の1営業日前(権利落ち日)または権利確定日の当日である場合は、本来の株価で評価を行うため、権利確定日の2営業前の終値をもって、被相続人が亡くなった日の終値とします。
配当に関しては、被相続人が亡くなったのが、3月、6月、9月、12月の最後の平日、最後から2番目の平日である場合に、権利落ちの問題が生じ、権利確定日の2営業日前の終値で評価しなければならなくなる可能性があります。
※ もちろん、業績不振等の理由により実際に配当がなされていなければ、権利落ちの問題が生じることはありません。