戸籍については、高齢者消除と呼ばれる制度があります。
戸籍には、実際には死亡していると思われるにもかかわらず、戦時の混乱や誰からも死亡届が提出されていないこと等の理由により、生存しているままになっている方がいます。
一時期には、国内最高齢を大幅に越える150歳の方が、戸籍上、生存しているのと記載がなされていました。
これらの、特に年齢が100歳以上であり、かつ、住所が分からず生存しているかどうかを確認できない方については、戸籍の記載をそのまま放置しておくのは妥当ではないと考えられています。
というのも、これらの方が実際には亡くなっているのでしたら、今後、誰からも死亡届が提出されないままとなり、戸籍上、いつまでも生存しているのと記載され続けることとなってしまうからです。
このため、100歳以上であり、生存しているかどうかが不明な方については、市町村長が、法務局長の許可を得て、戸籍から消除することができるものとされています。
これを高齢者消除と、言います。
高齢者消除がなされると、戸籍上、「高齢者につき死亡と認定」との記載がなされます。
それでは、死亡の事実を証明できない方がいる場合には、高齢者消除の制度を用いることにより、その方が死亡したものと取り扱うことはできないのでしょうか。
「高齢者につき死亡と認定」との記載からすると、その方を死亡したものと取り扱うことができるような感じがしますが、そうではありません。
高齢者消除は、あくまでも、戸籍の事務処理上、死亡したとの認定を行うに過ぎないものであり、法律上、死亡したものとみなされるわけではありません。
したがって、高齢者消除がなされたとしても、その方を当事者としなければ、遺産分割協議を行うことはできず、不動産や金融資産の手続もできないこととなります。
このため、高齢者消除がなされ、「高齢者につき死亡と認定」との記載がなされている方がいるとしても、失踪宣告等の手続を行わなければ、その方を死亡したものとみなすことはできないこととなります。
なお、高齢者消除とは別に、認定死亡という制度があります。
高齢者消除が戸籍上「高齢者につき死亡と認定」との(まぎらわしい)記載がなされるため、混同されがちですが、認定死亡と高齢者消除はまったく別の制度です。
認定死亡は、火災や水難事故の際、これらの事故に遭った方を、行政が死亡したとの認定を行うものです。
認定死亡の対象になった方は、法律上も死亡したとの推定がなされることとなっています。
このように、制度を正確に理解しなければ、誤った結論を導きかねないため、弁護士としては、細心の注意を払いたいところです。
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