被相続人に多額の債務が存在する等の理由により,被相続人から一切の財産も負債も引き継ぐことを希望しない場合には,相続放棄を行うことが考えられます。
相続放棄を行う場合には,自分が相続放棄を行うことにより,他の親族が相続人になる可能性があるということに注意する必要があります。
民法では,法定相続人について,以下の規定が置かれています。
1 配偶者
配偶者は常に相続人となる。2 血族
⑴ 被相続人の子は,第一順位の相続人となる。
※ 被相続人の子が亡くなっており,その子(被相続人の孫)がいる場合は,その子(被相続人の孫)が第一順位の相続人となる。
⑵ 被相続人の父母は,第二順位の相続人となる。
⑶ 被相続人の兄弟姉妹は,第三順位の相続人となる。
※ 被相続人の兄弟姉妹が亡くなっており,その子(被相続人の甥,姪)がいる場合は,その子(被相続人の甥,姪)が第一順位の相続人となる。
相続放棄との関係では,先順位の親族が相続放棄を行った場合には,後順位の親族が相続人となります。
たとえば,被相続人の子が相続放棄を行った場合には,被相続人の父母が相続人の地位を有することとなります。そして,被相続人の父母が相続放棄を行った場合には,被相続人の兄弟姉妹が相続人の地位を有することとなります。
このように,被相続人の子,被相続人の父母が相続放棄を行った場合には,新たに,後順位の親族が相続人の地位を有することとなることに注意する必要があります。
たとえば,自分が相続放棄を行った場合には,自分の後順位の親族に対し,相続人の地位が生じることを伝える等した方が良いこともあるでしょう。
基本的には,弁護士として相続放棄の案件を担当する場合も,上記のような考え方で手続を進めています。
もっとも,相続放棄の案件を多く担当していると,例外的な案件を担当することもあります。
この点については,次回説明を行いたいと思います。