遺留分に対応した民事信託としては,以下のものが想定されています。
Aさんがアパート(土地+建物)を信託の対象財産とし,民事信託を設定します。
Bさんは,民事信託の受託者として,アパートの管理・賃料の収受に当たることとします。
当初は,Aさんを第一次の受益者とし,アパートの賃料収入については,Bさんが受け取ることとします(これは,Bさん,Cさんを第一次の受益者とすると,贈与税が発生する可能性があるからです)。
そして,Aさんが亡くなられた場合には,BさんとCさんを第二次の受益者とし,アパートの賃料をBさんとCさんが2分の1ずつ受け取ることとします。
最終的に,Cさんが亡くなられた場合には,Bさんか,Bさんの子を残余財産帰属者とし,Bさんか,Bさんのが子が取得することとします。
このような民事信託を組む場合,Aさんの相続により,Bさんは2分の1の収益を受益する権利を,Cさんは2分の1の収益を受益する権利を取得することとなります。
このように,Cさんは,2分の1の収益を受益する権利を取得できますので,この権利の評価額が1000万円を上回れば,Cさんは十分な財産を受け取っていますので,遺留分減殺請求権を行使できる余地はないこととなります。
あと,Cさんが亡くなられた場合には,Bさんか,Bさんの子は,最終的にアパートのすべてを取得することができます。
この部分について,Cさんの子が,Bさんか,Bさんの子に対して遺留分減殺請求権を行使することができるのではないかという疑問もあります。
この点については,Aさんが組んだ信託契約に基づいて取得するものであり,Cさんが組んだ信託契約に基づいて取得するものではないですので,Cさんの相続の際の遺留分減殺請求の対象にすることはできないとの説明がなされています(複雑な話ですが,最終段階をAさんの相続による遺留分減殺請求ととらえるとしても,Aさんから,Bさんか,Bさんの子が受け取る権利は元本受益権に過ぎず,これらの評価額は高額になるものではないため,Cさんからの遺留分減殺請求はできないとの説明がなされるようです)。