相続放棄について3

相続放棄を行うと,相続人であった方は,亡くなられた方が負っていた債務を返済しなくて済むと説明されることがあります。
確かに,法律上,相続放棄を行えば,亡くなられた方の債務を負うことはなくなりますが,現実には,相続放棄を行う場合に注意を要するポイントがあります。
それは,亡くなられた方の債務を,親族の誰かが保証していないかということです。

法律上は,亡くなられた方の相続人全員が相続放棄を行ったとしても,保証債務は消滅するわけではありません。
このため,相続人全員が相続放棄を行った場合であっても,債権者は,保証人に対して請求を行うことができるということになります。
親族が債務を保証している場合には,その親族に対して,保証債務の請求がなされることとなります。
さらには,貸付時の契約書を確認すると,相続人が相続放棄を行った場合には,期限の利益が失われ,債務残高の全額が一括で請求されることとなっている場合もありますので,このような保証債務の請求がなされた場合には,保証人は,(契約上は)一括して返済しなければならないこととなります。

相続放棄をした方が保証人になっていた場合であっても,結論は同じですので,相続放棄を行った方に対し,保証債務の請求がなされることとなります。
つまり,相続放棄を行えば債務を返済しなくて済むとの説明を受けたにもかかわらず,蓋を開けて見ると,何か月かたって,多額の保証債務の請求がなされるという事態になりかねないのです。

親族間では,深く意識することなく,頼まれるがままに,保証人欄に署名・押印してしまうこともあるかと思います。
このため,相続放棄を行うかどうかを検討するに当たっては,記憶を辿っていただき,保証人欄に署名・押印を行ったことがないかを慎重に確認する必要があります。
私自身,弁護士としてご相談をお受けする場合は,初期の段階で,保証債務の有無を確認することとしています。

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