第二の方法としては,
① 固定資産評価証明書に出てくる住所と,被相続人の住民票の住所が一致していること
② 相続人全員において,登記簿上の名義人と被相続人が同一人物であることを確認する内容の上申書(申述書等)を提出すること
をもって,同一性を証明する方法があるようです。
上申書には,相続人全員が実印で押印し,相続人全員の印鑑証明を添付する必要があります。
相続登記の場合,遺産分割協議書に添付する印鑑証明は古いものでも構わないと言われることもありますが,上申書に添付する印鑑証明につきましては,3か月以内に発行されたものでなければなりません。
相続人全員が不仲ではない場合は良いですが,相続人が対立関係にある場合は,上申書に実印を押印し,3か月以内の印鑑証明を提供してほしいと申し出ても,提供していただけない場合もあると思います。
相続人が三重県外に居住している等,遠方に散らばっている場合も,3か月のスパンで必要な書類を集めることに支障がある場合もあります。
ですから,交渉が成立し遺産分割協議書を作成する段階で,登記のために上申書に実印を押印してもらう必要があり,かつ,3か月以内の印鑑証明書の提供を受ける必要があるときは,あらかじめ,これらの書類の提供をお願いしておくのが安全だと言えます。
後日,実は上申書が必要でしたとなったものの,他の相続人の協力が得られないという事態になってしまえば,手持ちの書類で登記手続を進めることができなくなってしまいます。
どうしても名義変更できない場合は,最後の手段として,訴訟により移転登記を求めることもできます。
ただ,訴訟手続につきましては,判決を得て確定するまで,スムーズにいっても何か月かの時間がかかりますし,他の相続人が遺産分割協議書を勝手に作られた等の主張を行えば(主張が通る,通らないは別として),さらに時間がかかることになってしまいます。
このような事態を避けるためにも,遺産分割協議が成立する前の段階で,登記簿上の名義人を確認しておくべきだと言えます。