遺言と登記4

清算型遺言を行う際に,次のような定めを置いたとします。
「遺言執行者は,前項の不動産を売却処分する権限を有する。」

このように,遺言執行者が不動産を売却処分する権限を有することを明記した場合は,次の通り手続を進めることができるとされています。
① 被相続人から相続人名義に変更するための相続登記については,遺言執行者が単独で行うことができる。
② 相続人から買主に売却する場合の登記手続については,遺言執行者と買主の共同申請により行うことができる。

このように,清算型の遺言の場合も,遺言執行者を定めることにより,相続人を手続に介在させることなく,不動産を売却するまでの手続を進めることができるようになるのです。

もちろん,相続人の権利を保護する必要がありますので,遺言執行者が不当に安値で売った場合は,善管注意義務等に基づく責任を負う(損害賠償請求される)可能性があるように思います。
また,相続人の側から遺言執行者を解任する手続をとることも考えられます。
このように,完全に遺言執行者の自由にできるというわけではないように思いますが,遺言執行者は,売却処分権限が与えられた場合には,相当の裁量の枠内で,権限を行使することができることとなるのです。
別の言い方をすれば,遺言者の遺志の実現のため,きちんとした道筋が準備されていることとなるのです。

このような手法は,相続人の関係が良好でない場合は,ニーズが高いと思います。
私自身,弁護士相談等で,不動産の売却も視野に入れた対策について質問を受けた場合には,遺言執行者についての助言を行いたいと思っています。

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