相続と賃貸借契約3

賃借人の相続人が存在する場合は,内縁の妻は,相続人が引き継いだ賃借権を援用することができます。

他方,賃借人の相続人が存在しない場合は,上記のようにはいかなくなります。
相続人が存在しない場合は,相続財産は最終的に国に帰属することになります。
賃借人の地位も相続財産の一種ですから,相続人が存在しなければ国に帰属するということになりそうです。

このように,相続人が存在しない場合は,判例によっても,内縁の妻の居住権は保障されないということになります。
このことは,生活の基盤を失う側にとっては,酷な結果を招きます。
そこで,このような場合に,内縁の妻の居住権を保護するため,立法による対応が行われることとなりました。

借地借家法は,次の場合に,同居人が建物賃借人の地位を引き継ぐことができるとしています。
同居人が賃借権を引き継ぐ要件は、次のとおりです。
  
① 居住の用に供する建物であること。
② 建物の賃借人が相続人なしに死亡したこと。
③ 同居者が賃借人と事実上の夫婦または養親子と同様の関係にあったこと。
  
これらの要件を満たす場合に,同居人は建物賃借人の地位そのものを引き継ぐことになります。
他方,同居人が賃借人の地位を承継することを望まない場合は,同居人は,相続人なしに死亡したことを知った時から1か月以内に,建物賃貸人に対し,賃借人の地位を承継しない旨の意思を表示する必要があります。

弁護士会等での相談を行うと,司法試験ではよく扱われるけれども,実際には,あまり出会うことのない法律問題について相談を受けることがあります。
このような場合には,六法を確認する等しつつ,過去の記憶をたどる必要があります。

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